5.「年寄りも若返ったとき」
今世紀になって本格化した栽培ゴムの特大価格ブームは、合成ゴムの生まれる前、つまり第二次世界大戦以前に数回存在した。このうちスマトラといわず東南アジアの小農ゴム栽培者にとって重要なブームは、1920年代後半と30年代後半に起こっている。30年代のそれは、村人のあいだで〈クーポン時代〉の名で知られる。この時代、ゴム液だけでなく、価格安定化のためにゴム産出制限手段として一年四回配布されたクーポンも、ゴム商人に売ることができた。ゴム園所有者にとってはまことにおいしい時代だった。上流域からたくさんのミナンカバウ人が商人やゴム採取の労働者として到来し、クワンタンは好況に沸いた。ある村人にいわせれば、〈クーポン時代〉とは「年寄りも若返ったとき」、そんなありえないことも起こりそうな、とてつもない時代だったのである。
ゴム到来後、村には雑貨店が開かれるようになった。村人の経営になるが、安定した経営は難しいようで、商店主の顔はしばしば交替する。
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