<寄生メタ地域>の暴走に歯止め
このような関係はしかし近現代になって大きく変質したと思う。地域間の弱肉強食的接触が急速に進み、また人間の自然征服という誤った考えが拡散させられたからだ。そのため<メタ地域>が異常増殖して一人歩きをし、<寄生メタ地域>に変質しはじめた。影がものを包み、人の足跡は恐ろしい迄に深い窪みとなった。制度は身動きとれない厚い鎧となり、文化はその不自由さをごまかす飾りに堕している。地球全体社会の秩序は強者への奉仕のために歪められ、自然は人間の異常増殖した欲望によごされた。こうなった背景には学問の責任も大きい。一対の因果関係のみを追って、地の現象を切り捨てる要素還元的方法が破綻をもたらしたと見える.誰もが自分の研究にのみ忙しく、その外のことは考え無い状況がある。気がつくと自分はごみに埋まり,戦場に倒れていたと言うおそれもある。総合知を求める地域研究の目的は<自然地域>の覚醒で、<寄生メタ地域>の暴走に歯止めをかける、少なくとも、その方策に見通しをつけることだろう。
5 近代アジアの命運を分けた戦闘をあげるなら、日露戦争における日本海海戦とベトナム抗仏戦争におけるディエンビエンフー攻略戦だろう。盆地北西の密林に置かれた司令部からボー・グエン・ジャップ将軍が指揮をとった戦闘は1954年5月7日、劇的な勝利で終わった。
(ヴェトナム、ディエンビエンフー北東)
|