第十三回 「〈多神教〉的イスラームと〈一神教〉的イスラーム」
東南アジア地域研究専攻(南・西アジア地域研究) 東長靖(連環地域論講座)tonaga@asafas.kyoto-u.ac.jp
キルギスタンで、邦人誘拐が起こった。「イスラム原理主義」ということばは、確実にテロ組織のイメージと重なり、いつしかそれは、イスラームそのものが暴力的なのだというイメージと結びつく。 今回の事件が、純粋にイスラームの教えの実践をめざしたものであると見ることは当を得ていまい。冷戦崩壊後の権力の構図、経済問題、資金・武器の流れ、民族問題などさまざまな要素が複雑にからみあっている。 それでも、彼ら活動家が、「イスラーム」を、それも「正しいイスラーム」を口にすることは確かなのだ。そもそも「正しいイスラーム」とは、何なのか。
Contents
1.雪をかぶるモスク
2.知の伝統とイスラーム世界
3.アッサラーム・ナヴルーズ
4.「多神教」的イスラーム
4-1 アッラーを超える存在?
4-2 誰に願いを?
5.「一神教」的イスラーム
5-1 男女隔離
5-2 メッカは「イスラームのメッカ」か?
6.「正しい」イスラーム
6-1 偶像禁止
6-2 国王も聖者信仰