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5.「一神教」的イスラーム
5-1 男女隔離
おそらくほとんどすべての一神教に、上に述べたような「多神教」的要素は内包されるのであろう。それに対する批判と、「純化」の主張もまた。
イスラームにおいて、このような批判は、近現代に特徴的なものであるといってよい。前近代にこのような批判がなかったといえば史実に反するが、少なくともそういう潮流がイスラームの主流となることはなかったといってよいだろう。
4-1で取り上げた神秘主義哲学者イブン・アラビーは、その後霊験あらたかな「聖者」として奉られ、人々は彼の廟に願掛けに訪れるようになった。1998年にその廟を訪れた私は、10年前にはなかったあるものを目にして驚いた。
それは、男女の礼拝場所を隔離するカーテンである。老若男女を問わず、人々が祈りに訪れる場所であった聖者廟にまで、「イスラム原理主義」の波は押し寄せていたのであった。
男女の礼拝場所を隔離するカーテン
(イブン・アラビー廟、シリア・ダマスクス)
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Contents
1.雪をかぶるモスク
2.知の伝統とイスラーム世界
3.アッサラーム・ナヴルーズ
4.「多神教」的イスラーム
4-1 アッラーを超える存在?
4-2 誰に願いを?
5.「一神教」的イスラーム
5-1 男女隔離
5-2 メッカは「イスラームのメッカ」か?
6.「正しい」イスラーム
6-1 偶像禁止
6-2 国王も聖者信仰
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