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5.「一神教」的イスラーム
5-2 メッカは「イスラームのメッカ」か?
イスラームには、常に収斂と拡散の二つのベクトルが働いてきた。この両者のせめぎ合い、ダイナミズムの中にイスラームの歴史が内包される。前者のベクトルはイスラームの統一性、後者のベクトルはイスラームの多様性に結びつく。
メッカこそは、収斂・統一性の象徴である。カアバ神殿を擁するイスラーム第一の聖地。ムハンマドが生まれ、その前半生を過ごした町。今日でも1日5回の礼拝の方向はメッカに決まっているし、年に1度の巡礼には、何百万というムスリムがこの町に押し寄せる。
しかし、イスラームのごく初期を別にすれば、メッカが、現実のイスラーム世界において、真の意味で中心となったのは、近現代のことと考えてよいであろう。
より中心的であるか、周縁的であるかの差はあるにせよ、イスラームの諸都市はネットワークで結びついていた。メッカのみが、唯一の中心となる一極集中構造は、近現代の産物であろう。メッカは、近代に至ってはじめて、「イスラームのメッカ」となったのだと考えることができる。
メッカのカアバ神殿(サウジアラビア)
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Contents
1.雪をかぶるモスク
2.知の伝統とイスラーム世界
3.アッサラーム・ナヴルーズ
4.「多神教」的イスラーム
4-1 アッラーを超える存在?
4-2 誰に願いを?
5.「一神教」的イスラーム
5-1 男女隔離
5-2 メッカは「イスラームのメッカ」か?
6.「正しい」イスラーム
6-1 偶像禁止
6-2 国王も聖者信仰
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