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6.「正しい」イスラーム
6-2 国王も聖者信仰
アッラー以外のものを拝むことにもつながりかねない聖者信仰は、「多神教」的だとして批判されることがあったとすでに述べた。今日では、「一神教」的イスラームの伸張が著しいが、しかしその潮流はイスラーム世界全土を覆っているわけではない。
モロッコにおいて、国王は預言者ムハンマドの子孫としてのカリスマ性を主張し、自ら聖者として振る舞うと同時に、聖者の柩にかける布を寄進することにもためらいを見せない。現代モロッコにおいて、聖者信仰は、「正しい」イスラームの一部なのであった。
このように、「正しい」イスラームなるものは、常に伸び縮みする概念(従って言説)であると知ること、それゆえに、各地の民衆的慣行などを語る際に、「一神教」的なイスラームを「正統」イスラームと同定して、それとの対比でのみ論じないこと、が肝要であろう。
聖者の柩にかけられた布・先端部(三角形の部分)には、
「信徒たちの長、ハサン2世猊下の命によって」と書かれている
(モロッコ・マラケシュ)
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Contents
1.雪をかぶるモスク
2.知の伝統とイスラーム世界
3.アッサラーム・ナヴルーズ
4.「多神教」的イスラーム
4-1 アッラーを超える存在?
4-2 誰に願いを?
5.「一神教」的イスラーム
5-1 男女隔離
5-2 メッカは「イスラームのメッカ」か?
6.「正しい」イスラーム
6-1 偶像禁止
6-2 国王も聖者信仰
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