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4. 東南アジア型社会 -異質への親和性-
離婚した娘の子が祖父母と暮らしているということを既に述べた。この社会では離婚がかなり多いのである。女性なら15、6歳、男性なら18歳くらいで結婚するという早婚的傾
向と、居住地に関する決まりがなく、夫も妻も自分が親しんだ人間関係にある程度の執着をもつという状況がある。この中で、イスラム教が準備した比較的簡単な離婚手続きを利用して、高い離婚傾向が見られるのである。それは、世界でもっとも高いといわれる米国の離婚傾向に匹敵するかあるいはより高いくらいであった。このような行動が、マレーシアの田舎で起こっていたのである。このような行動は都会的であるとさえいえる。ちなみに日本や米国では、いわゆる近代化に対応する形で離婚が多くなっているのである。行動において一見都会的だが、対応においてはその中に親族関係が渦巻いている。柔軟な親族の結びつき方は、個人主義が主流を占める都会では考えにくい。マレーシアやインドネシアでは、このように伝統的に多かった離婚が、教育の普及や結婚年齢の上昇、新しい家族観の成立にともなって日本やアメリカとは逆に、著しく減少してきた。これもまた、違いの一つである。
いわゆるグローバリゼーションは、世界を共通性の高い存在につくりかえようとしている。今日、我々が国際社会で交渉し、都会で出会う東南アジアの人々は、我々と共通な生活のスタイルをもつ場合が多い。それはそれとして、彼らの育った背景は、日本のそれとはよほど異なるものであり、ある意味でははるかにダイナミックなものであったことに思いを至らせることができる。それは、異質に対してもち続けてきた親和性である。
上流部の村の片隅に残るリンガ。
ヒンズーの名残りを示す。
住民は現在イスラム教を奉じている。
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Contents
1、アジアの中の東南アジア
多様な側面
異質の要素
2、類似のなかの異質
2-1、都市の構造
多民族的構造
2-2、移動性
出稼ぎ
焼畑
3、小人口世界
4、東南アジア型社会
農民と移動
異質への親和性
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