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4. 東南アジア型社会
無限の土地と呼ぶと言い過ぎだが、このような状況のなかからできてくる東南アジアの社会の特質は次のようにまとめられるかもしれない。それらが、冒頭に述べた宗教その他の化粧を施して、具体的な姿を見せるのである。
1、非定着性ないし外縁拡大性
2、土地に価値を求めないこと。すなわち、人格という意味ではなく労働力という意味での 人間こそ価値の根源であること。
3、双系的な親族関係の発展と維持。これは、少し専門的な用語なので少し解説すると、系譜、相続、居住に関して男女の平等あるいは均分を原則とする制度のことである。たとえば、祖先として扇形にひろがる祖父母、曾祖父母の間から顕著な功績を残した人物を選び取ること、財産は男女の子で均分すること、結婚後の居住は夫方妻方あるいは新居いずれでもよいことなどである。
4、集団形成における融通性。とくに能力のある親分が追随者を集めるということが容易である。同時に、役に立たなくなった親分を見捨てることも容易である。
5、圏的構造。境がはっきりしない連続的変化。
このような特色が、固定的な人間関係を形成してきたむらの社会や封建社会(この頃ではあまり用いられなくなったが)に根ざすところが大きく、集団主義が重要であった日本の社会と大きく異なっている。日本の社会が、集団主義や固定的な雇用関係を離れて、より自由な結合の形へと移行しようとしているのに対して、東南アジアには、かつてのルースな状態からむしろ恒常的なものの増大が求められているのも面白い現象である。
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Contents
1、アジアの中の東南アジア
多様な側面
異質の要素
2、類似のなかの異質
2-1、都市の構造
多民族的構造
2-2、移動性
出稼ぎ
焼畑
3、小人口世界
4、東南アジア型社会
農民と移動
異質への親和性
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