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1. アジアのなかの東南アジア -異質の要素-
ヨーロッパとアジアあるいは、西と東という対比はしばしば行なわれてきた。ときには、ヨーロッパの眼からアジアは不可解の存在として呈示されたりしたこともある。東南アジアは、名の示すとおりアジアのなかに含まれる。アジアという観点にたてば、インド、中国、日本などとの共通点があるに違いない。しかし、ここで議論しようとしているのは、アジアという共通性のなかでの東南アジアではなく、アジアのなかでの異質の構造である。
日本と東南アジアを比較すると、日本とインドあるいは日本と中国を比べる時以上に共通な側面を指摘することができる。とくに過去の状態を扱う場合にそうである。アジア全体に小農経営が多いという状態のなかで、中国の北部やインドの北部や西部では小麦などを主作物とするのに対して、その中間の地域、すなわち、日本、南中国、東南アジア、東および南インドを含む地域では水稲が主作物になっていた。稲作という共通項である。そして、かつてよくいわれたように(今日では余程少なくなってしまったが)、穏やかな控えめな微笑を絶やさぬ人々がそこで生活していたのである。
本日の話は、このような共通基盤の上にみられる異質の要素の指摘である。類似のなかの異質がテーマになる。一見似たところから、どれだけの違いが発見されるか。それはどのような意味をもつのか。私は、ここでこの問題を解決しようとは思わないが、一つの問題提起としての位置を与えたい。
下流部の風景。州都ボンティアック周辺
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Contents
1、アジアの中の東南アジア
多様な側面
異質の要素
2、類似のなかの異質
2-1、都市の構造
多民族的構造
2-2、移動性
出稼ぎ
焼畑
3、小人口世界
4、東南アジア型社会
農民と移動
異質への親和性
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