<< 東南アジア地域研究専攻 2000年度目次へ戻る |
第二五回 「カリフへの呪い」 清水和裕 連環地域論講座(東南アジア地域研究専攻) |
|||
Contents 6.カリフへの呪詛の構図 6.b.ムアーウィヤ賛美と呪詛、呪詛の中止 |
6.b.ムアーウィヤ賛美と呪詛、呪詛の中止 これに対して多数派のうち一部の過激派(ハンバル派バルバハーリー・グループ)は、実力行使を持ってシーア派にあたると同時に、彼らを挑発する意味を込めて、ムアーウィヤの賛美を行った。シーア派の初代イマームであるアリーは4代カリフとして多数派の崇敬も受けていたため、その敵であるムアーウィヤを賛美したのである。しかし、アッバース朝の敵でもあるムアーウィヤ賛美はアッバース朝の逆鱗にふれ、しばしばムアーウィヤ賛美の禁止が布告された。その一方で、ウマイヤ朝残党を意識してムアーウィヤを呪詛しようとするカリフの試みは、シーア派に反発する多数派を刺激した。さらにそれはアリー家を称揚し彼らの反アッバース朝活動に火を注ぐことになりかねなかった。結局カリフ達はムアーウィヤを公に呪詛することができなかった。 |