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5、ポスト植民地期における
アイデンティティ形成の文化政治学
インド独立後は、村人らは参政権を得て、活発な政治活動を行うようになった。これに対しては、「男の仕事」として高い価値が与えられる一方、共同性をこわす「近代的腐敗」としての評価もある。ラモチョンディ女神儀礼についても、「我々の歴史と伝統」としての位置づけと同時に「もう時代遅れ」という声もある。
現代インドにおいては、政治・経済領域におけるダイナミズムと宗教・儀礼領域における「伝統的」アイデンティティの間に齟齬が生じている状況がある。つまり植民地状況で成立した政治・経済/儀礼・宗教の二分法と、近代/伝統という二分法とが重ね合わされ、制度的にも思想的にも束縛を生んでいるのである。このなかでインドの人々は、自らのあるべき姿を探り直そうとしているようだ。その過程はしばしば摩擦と暴力を伴うものであるが、インドが新たに大きく動いていることは確かである。
「永遠の遊戯(リーラー)にあるといわれるラーダー女神とクリシュナ神。一にして多、多にして一の聖なる原理を象徴する。植民地的二分法を克服する文化的資源となりうるか、それともアイデンティティ・ポリティックスの道具にされてしまうのか」
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Contents
1-1、アイデンティティ
形成の場としての儀礼
1-2、儀礼から何がわかるのか?
2、儀礼の過程
2-1、礼拝と憑依
2-2、女神が太刀をとる
2-3、供犠と軍事行進
3、儀礼の解釈
3-1、象徴体系の視点から
3-2、政治・社会体系の視点から
3-3、歴史ドラマとして
4-1、歴史の中の儀礼
/儀礼の中の歴史
4-2、演ぜられない植民地経験
5、ポスト植民地期における
アイデンティティ形成
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