|
4−2、演ぜられない植民地経験
『ムガル帝国から英領インドへ』
当儀礼で表象されない歴史とは植民地経験である。オリッサ地方はインド帝国の一部として、1947年のインド独立に至るまで、英国の植民地下におかれた。植民地体制の下で、王権は政治的権能を失い、村人たちも政治過程や植民地経済から締め出される。そこで村人たちは、せめて自分たちの自由になる儀礼領域において王権や軍事とつながる「伝統」を再興させたようだ。そこでは、植民地経験は「われわれ」の本質に属さないものとして儀礼表象から排除される。これは植民地化によって「傷つけられた男性性」の回復への希求であり、植民地体制に対する一種の文化的抵抗でもあった。
|
|
Contents
1-1、アイデンティティ
形成の場としての儀礼
1-2、儀礼から何がわかるのか?
2、儀礼の過程
2-1、礼拝と憑依
2-2、女神が太刀をとる
2-3、供犠と軍事行進
3、儀礼の解釈
3-1、象徴体系の視点から
3-2、政治・社会体系の視点から
3-3、歴史ドラマとして
4-1、歴史の中の儀礼
/儀礼の中の歴史
4-2、演ぜられない植民地経験
5、ポスト植民地期における
アイデンティティ形成
|