Contents
1.はじめに
2.世俗主義の地域性
3.近代世界における認識論と支配構造
4.ポスト冷戦期における存在論の再浮上:ポスト啓蒙主義時代へ
5.自由の条件としての絶対真理の領域
6.ダルマとリベラリズム
7.ヒンドゥー教における自由
8.ダルマにおける供犠的行為
9.ダルマと現代世界
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6.ダルマとリベラリズム
インド伝統思想においては、アルタ(政治経済)の領域はダルマ(法、正義)の領域に包摂される。つまり前者は後者の下位におかれるのである。このことは、アルタの領域を司る為政者は、ダルマに従わなくてはならないことを示すと同時に、為政者の側がダルマが何かを決定できる立場にはないことを示している。むしろ国家は自らの存在を超えた真理の存在を認め、ダルマに応じて自らが与えられた役割を果たすことが求められるのである。しかしこれは特定の宗教原理を国家が採用するということを意味しない。国家は、宗教についての判断を自らがなすことは許されないし、国家の規定した宗教原理を社会の側に押し付けることはできないのである。むしろ為政者は、ダルマを知るもののアドバイスを受けながら、ダルマにてらして為政者として自らがなすべき義務を執行することが要請されているのである。
ダルマの思想における国家と宗教の関係は、真理の存在を認めるリベラリズムの立場と実はきわめて近い。相違点とは言えば、真理の性質およびその真理と我々の関係についてどのように考え、それをいかに社会生活に生かすかということである。両者の違いについて論ずる前に、ダルマについてより詳しく説明する必要があるだろう。
オリッサ州プリーにおけるロト・ジャトラ(山車祭)
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