アジア・アフリカ地域研究情報マガジン:メルマガ写真館
第145回 「メルマガ写真館」
「英雄的指導者の残影とレバノン内戦の遺恨: ドゥルーズ派の村を訪ねて」
... 岡部 友樹(グローバル地域研究専攻)
この写真には, 地中海の東, ヨーロッパとアジアをつなぐ中東の国レバノンで, 強かに生きるイスラームの少数派であるドゥルーズ派の親子三代が映っています.蒸し暑い夏のベイルートの海岸沿いから追われるようにやってきたのは, レバノン山地に位置するドゥルーズ派の小村でした.山に上がると, 夕暮れ時の涼しさを昼でも感じることができ, いまは平穏にみえるこの景色も, 1975年から1990年には破壊的な内戦が襲いました.ドゥルーズ派といえば, 内戦中に革命的なリーダーとして活躍したカマール・ジュンブラートがいますが, その英雄像はいまだ陰りを見せていません.内戦中の1982年にイスラエルの軍事介入があり, 中央に写るシャイフ(宗教指導者)は, それによって「開通」したレバノン-イスラエル国境を越えて, 声高々に異郷に暮らすドゥルーズ派たちの連帯を叫んだそうです.