アジア・アフリカ地域研究情報マガジン:メルマガ写真館
第146回 「メルマガ写真館」
「調査の醍醐味:特別な生肉を味わう」
... 下山 花(アフリカ地域研究専攻)
エチオピアの祭日に欠かせないのは、牛の肉です。私の調査地である同国南部のガモ地域に暮らす人びとは、日常的には穀類と野菜を中心にした食事をとっていますが、祭日には角切りにした生肉を、トウガラシをベースにしたソースにつけて食べます。お祝いの日は、穀物や日用品を売っている定期市の場が屠殺場に代わり、写真のように一面が生肉で覆われます。その肉は全く臭みがなく、肝臓と胃でさえも生で食べられます。おいしいのはもちろんですが、世帯のメンバー全員がその祭日を楽しみして待ち、日常的に食することのできない肉を一緒に食べる時間は最高です。祝祭日の有無に関係なく好きなものを食べることができる日本では、「待つ楽しみ」を体験することが難しく、待ちに待った牛肉を味わったときの幸福感は想像をはるかに上回るものだと思います。