Contents
1.はじめに
2.マレーシアにおけるイスラームと国家
3.イスラームの制度化(1)行政
4.イスラームの制度化(2)教育
5.センポルナ郡におけるイスラームの正統性観
6.知的権威の移行:スルーからマレーへ
7.公的機関という権威
8.制度化とムスリム社会のダイナミズム
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8.制度化とムスリム社会のダイナミズム
以上をまとめると次のようになる。かつてセンポルナ郡のムスリムは、スルー出身の知識人、あるいはその伝統を受け継いでいたローカルな知識人の、知識、言語、慣習のなかにイスラームの正統性を認めていた。しかしかれらは、イスラームが制度化されていく過程において、マレーネス(マレー人、マレー語、そのテクスト)と公的機関という外来の権威のなかに、あらたな正統性をみいだすようになった。イスラームに関する様々な「正しいこと」は、ローカルな知識人ではなく、公的機関が、あるいは半島のマレー人ウスタズが決めることであると、と認識するようになったというわけである。
ここでみたのは、制度化されたイスラームがムスリムのあいだで比較的スムースに受け入れられ、それに従ってかれらのイスラームについての考え方が再編された事例である。マレーシアの、あるいは東南アジアの他の地域では、制度化に対抗・反発するかたちで人々のイスラームについての考え方、実践が再編されている例もある。いずれにせよ現在の東南アジアにおけるムスリム社会を動態的に理解するためには、イスラームの制度化と、それに対するローカルなレベルでのムスリムの対応を相関的にとらえる視座が必要となっている。
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