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第十九回 「AA 研究科をフィールドワークする」 | |||
Contents 4.アリとキリギリス |
4.アリとキリギリス 暑い夏の陽射しのなかで一生懸命働き、食物を蓄えるアリ。一方、キリギリスは、そんなことにおかまいなく、音楽を奏でて面白おかしく暮らしている。しかし、やがて冬がやってきて、自然界に食べ物がなくなると、巣のなかで蓄えた食物に囲まれ、ゆとりある生活を送るアリにくらべ、キリギリスは飢えに苛まれなければならなかった。勤勉、備えあれば憂いなし、因果応報を教えるイソップ物語は、これはこれでよいのだが、この世の中、キリギリスだけでは困るが、かといってアリだけでも困ると思う。幸い、AA 研究科には、教師のなかにも院生のなかにも、いかにもアリだなという人もいれば、キリギリスも、トンボも、チョウチョウもいる。多様である。そして、じつは、地域研究についての考え方やアプローチも、これまた多様である。この多様性を蛸壺化にもってこいの狭くも安穏な住処の基とするのではなく、異種、変種の混淆・反応・融合をとおして、いかに知的好奇心の触媒、知的創造力のエネルギーに転化させていくのか――組織としても、教師・院生個々人としても、AA 研究科が取り組むもっとも大きな挑戦である。 ジャワ農村でアラビア文字とクルアーンの読誦法を習う子供たち。1900年頃。出典:Indonesia: Images from the Past, Times Editions, Singapore, 1987. |