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第十六回 「食糧生産と環境保全」 | |||
Contents 4.ムラ研究の楽しさともどかしさ |
4.ムラ研究の楽しさともどかしさ 農民一人一人と付き合い、水田一枚一枚と向き合う調査は、私たちの知識と考えを着実に広くし、かつ深めてくれます。個々の農民にはそれぞれの事情があります。例えば、「両親が離婚したので、おじいちゃんとおばあちゃんが孫を引き取り面倒を見ている。だから労働力が不足する。それで、昨年までは水稲を移植していたけど、今年は直播きに変えた」とのこと。そこで、はたと、水稲の作付方法は離婚とも関係しているんだ、と気づくわけです。じゃあ、離婚した背景はなんなんだろう、農村で離婚はどの程度の割合で起こっているんだろう、と興味も広がっていきます。でも、農家の事情は千差万別、村単位で見てもそれぞれの村は強烈な個性を持っています。同じ現象を見ていても、どのような村の話なのか、どのような農家の話なのかを前提としなければ、議論が成り立っていきません。これでは、一歩間違えると、重箱の隅をつつくような話になってしまいます。 1983年当時の調査村にて。この村で水田を見てまわった経験が今でも生きています。当時、私はほとんどタイ語やイサン語をしゃべれませんでした。それにもお構いなく、村の人たちはどんどん話しかけてくれます。たいていは笑い話の種にされていたのですが。 |