アジア・アフリカ地域研究情報マガジン:メルマガ写真館

第55回 「メルマガ写真館」

「It's a small world!」...伊藤千尋(アフリカ地域研究専攻)

 

南部アフリカのザンビアで調査をしていると、人びとの社会ネットワークの大きさを実感する出来事に遭遇することがよくあります。ザンビア南部のシアボンガという町で調査をしていたとき、市場にいた男性(写真中央)と何気なく話していたら、彼が300キロも離れた町からわざわざサツマイモを売りにやってきたことを知りました。現在のシアボンガでの滞在先を尋ねると、彼は「チプンザさんの家」と答えました。その瞬間、私は思わず「うそー!!」と叫びました。チプンザさんは、私が住み込んで調査をしている村でお世話になっていた学校の先生で、最近シアボンガの学校へ転勤になりました。何気なく話しかけた彼は、遠方から来たチプンザさんの知人だというのです。

 

シアボンガは私の調査地から車で1時間ほどで行けるため、村の人の知り合いも数多く住んでいます。そのため「友達の友達」に出会うことはよくあります。しかし、偶然話した彼は300キロも離れた町からやってきたうえに、私が村でお世話になったチプンザさんの知人だというので、さすがに「It's a small world!!」と感じました。

 

日本にいるとき以上にこのような出会いを経験するため、私はその背景にある人びとの社会関係の広がりに感心します。このような彼らの社会関係は、困ったときの頼みの綱としても機能しています。2-3人の知り合いをたどればどんな人にでも繋がってしまいそうな彼らのネットワークは、畑や家畜といった有形の資源に勝るとも劣らない彼らの貴重な資源なのです。

 

アジア・アフリカ地域研究マガジン第90号(2010年12月配信)