プログラム概要
(1)フィールドスクール
1年間のうち、アジアとアフリカそれぞれ1~2カ所に2週間~1ヶ月間フィールドスクールを開校します。同地域で活躍してきた実務家(国際機関、NGO関係者など)と本研究科(以下ASAFAS)や現地提携大学などの教員がフィールド講義・フィールド演習をおこないます。参加者は、ASAFAS院生と現地大学院生をおもな対象とします。フィールドスクールは、ASAFASが G-COEによってアジア・アフリカ諸国で運営しているフィールドステーションを利用します。フィールドステーションが設置されていない地域では、現地提携大学等と連携しながらフィールドスクールを開校します。開講予定テーマは、「人と自然のかかわり」「民族と宗教」「難民問題」「環境・資源・エネルギー」「開発援助」「言語と思想」「環境問題」など、スクールを開校する地域と密接に関連したテーマとします。またフィールドでの演習もまじえながら、国内での講義を補う実践的教育に重点をおきます。参加者には「臨地研究」として単位をだします。日頃教員が担当している科目を集中講義としてフィールドスクールで開講する可能もあります。参加院生は20人程度、フィールドスクールの対象となるASAFAS院生の約半数を目安にしています。
(2)院生発案共同研究
複数名の院生がひとつのグループを組織し、院生の発案により大きなテーマ(例えば「アジアとアフリカにおける地域的共生の論理」等)を設定して、そのテーマのもとに自分の研究テーマをその中に位置づけ比較の視点をもちながら研究をおこないます。これによりさらに領域横断的な視点から問題を考察する訓練が可能です。共同研究にとりくむ院生は、海外でワークショップを組織・実施して、研究成果を現地にも還元し、帰国後には成果集を刊行します。参加院生は20人程度を予定しています。
(3)研究発信トレーニング(国際協力のための実務基礎教育)
フィールドスクールを実施前に国内における事前研修として、国際協力のための実務を学ぶ短期集中コースをおこないます。具体的には、外国人研究者や実務家をアドバイザーにむかえて、英語による研究計画書の作成や英語によるプレゼンテーションのトレーニングをおこないます。年に一度、研究計画書の講評会および英語による発表会をおこないます。
(4)言語を主とする地域研究教材開発
現地語でグローバル社会、ローカル社会を理解することをめざした教材作成をおこないます。現地語による新聞や公文書の読解、臨地調査をおこなう過程で必要となる専門用語、さらには現地独特の知を表す概念語等を採録し説明を付した用語集(現地語 日本語)を、教員が編集し、フィールドスクールに提供して、参加者のその後の研究・実務の過程に役立てることをめざします。地域により現地語 英語で作成し、現地にも貢献します。
【期待される効果】
ASAFAS院生は、このプログラムを介して教員を通じた研究者の仕事以外に実務の仕事内容に触れ、将来先導的実務家として活躍する手がかりを得ることも期待されます。院生は、フィールドスクールへ参加することで海外の実務家からも指導を受けると同時に、若手実務家と院生が共に講義・演習に参加して学び、切磋琢磨することで、研究と実務を架橋した幅広い知識と経験をもつ人材が養成されることが期待されます。
【教育基盤】
5年一貫制で、国内での理論的研究と対象地域での長期臨地調査を通じた実践・応用的研究を組み合わせ、地域に対する総合的視野をもつ専門家育成を目指してきました。その特徴は、以下の3点にまとめることができます。
(1)複数指導教員と合同ゼミ
ひとりの院生に対して主指導教員1人と副指導教員2人による複数指導体制をとり、異なる分野から研究に対するアドバイスを行い、研究視角の拡大や問題の発見能力の涵養に努めてきました。合同ゼミで研究の進捗を報告し、指導教員以外の教員や他の院生も含めた厳しい討論の中で、常に論理的思考力を鍛錬しています。
(2)体系的カリキュラム
必修科目「地域研究論」において地域研究の概念や基本問題群について学習し、「課題研究」では論文執筆のために丁寧な個人指導を行い、課題探求・問題解決能力を育成しています。
(3)実地調査の重視
院生は、フィールドステーションや提携大学を拠点にしたり、国際機関・NGOにも受け入れてもらったりして、現地に長期滞在しながら資料収集や住み込み調査等を行っています。
【プログラム取り組み体制と実行委員の特徴】
本研究科教員は、文化・自然人類学、政治、経済、地理、医学、農学、歴史、言語、情報など広範な分野と、アジア・アフリカ全域をカバーできる陣容で、文理融合・学際的研究を先進的に進めて来ており、取組遂行に必要な組織的基盤は十分です。なかでも本プログラムは機動性の高い若手教員を中心に運営しており、実践力をもった高度な人材を生み出し、国際社会への貢献度も高いプログラムをめざします。