第46回 「メルマガ写真館」

「フィールドの『娘』」...小島敬裕（東南アジア地域研究専攻）

髪を切られながら、涙をポロポロと流しているのは、中国雲南省のミャンマー国境に面した徳宏州瑞麗にいる私の「娘」です。この写真は、私のフィールドの村で、彼女が女性修行者（ラーイハーウ）として16歳で受戒した際に撮影したものです。

断髪する二人は、村の寺に居住する先輩の女性修行者で、そのうちの一人は彼女の叔母にあたります。彼女はもともとミャンマー側で家業の手伝いをしていましたが、両親が相継いで亡くなったため、叔母の誘いもあって中国側の村で受戒することに決めたのです。

女性修行者になるためには、費用を寄進する人が必要です。その役割を引き受けて功徳を積んだのが、切った髪を白い布で受け止めている女性たちと私です。受戒した後、寄進者と女性修行者の間には擬制的な親子関係が結ばれ、彼女は私のことを「養父（ポーレン）」、女性たちのことを「養母（メーレン）」と呼ぶようになります。今では、「娘」に会うことも、フィールドへ戻るときの楽しみの一つになっています。