アジア・アフリカ地域研究情報マガジン:メルマガ写真館

第45回 「メルマガ写真館」

「ヒョウタン」...吉川久美子(アフリカ地域研究専攻)

 

「こんな風にして水やミルクを運ぶのよ。」
ある日、近所の女性がやってきて、牛の皮のロープで大きなヒョウタン2つを巧みに固定して見せてくれました。ケニア東部に暮らすカンバの人たちは、液体を運ぶ容器としてヒョウタンを利用するだけではなく、半分に切ってお皿やサービングスプーンにしたり、ヒヨコを野犬から守るための飼育箱にもするなどして上手く活用しています。

 

しかし近年では、プラスチックやガラス製の容器や陶器が急激に彼らの生活に浸透し、特に若い世代には、ヒョウタンは馴染みが薄くなっているようです。「昔のようにヒョウタンを利用する人は、随分少なくなってしまったよ。」どこか寂しそうに話すその女性は、経済的にそれほど有用でなくなったヒョウタンを今でも栽培し、日常的に使い続けています。文化や伝統がそのかたちを変えていくなかで、先祖の代から使われ続けてきたヒョウタンのよさを知る彼女は、優しくて強い眼をしていました。

 

アジア・アフリカ地域研究マガジン第80号(2010年2月配信)