アジア・アフリカ地域研究情報マガジン:メルマガ写真館

第42回 「メルマガ写真館」

「見放された木材」...鈴木遥(東南アジア地域研究専攻)

 

この写真は、インドネシア東カリマンタン州の内陸に広がる畑で、農家のダリアントさんがトウモロコシの出来具合を確認している様子を撮影したものです。

 

私がダリアントさんとはじめて出会ったのは2006年でした。当時、ダリアントさんが出来具合を確認していたのは、トウモロコシではなく、彼の経営する製材所で生産されていたウリン(写真中央の切り株、Eusideroxylon zwageri Teijsm.& Binn.)という樹木の木材でした。彼の製材所からは、朝から晩まで製材の音が鳴り響いていました。ところが、政府による生産規制が厳しくなったため、ダリアントさんは木材の生産をやめました。そして、次に目をつけたトウモロコシの栽培を始めたのでした。

 

ダリアントさんは、今後も生態環境にあわせて柔軟に生業を変えてゆくでしょう。ここで私は、ダリアントさんから見放された木材に注目しました。変容する生態環境のなかで見放されてゆく生態資源に、「生態環境からみた地域の重層性」を描くためのヒントがあると考えたからです。

 

アジア・アフリカ地域研究マガジン第77号(2009年11月配信)