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2000年度目次(東南アジア地域研究専攻)

  第二十四回 「地域の「履歴」を読む−クミリを例に」
 
 

Contents

1.「空間の履歴」

2.土地利用変化を読む

3.熱帯の油料作物

4.クミリという有用樹種

5.クミリの利用

6.クミリの栽培奨励

7.クミリからみた地域の「履歴」

8.地域の「履歴」を綴る

  

8.地域の「履歴」を綴る

 クミリを一例として、地域の「履歴」を読む試みを示しました。同じようなことは、クミリだけでなく、どんな作物や植物についてもあてはまるようです。アブラヤシのように大規模なプランテーション農業として栽培が拡大している場合にはドラスティックな土地利用変化が起こっています。それだけに、その開園にともなって生起している環境面や社会経済面での問題はクミリの場合よりも一層ダイナミックに現れています。一方、水稲のような作物の場合は、その変化がそれほど劇的に起こらないだけに、地域の「履歴」としては比較的安定した様相を示しているかもしれません。けれども、微細に見ていけば、品種の変遷や栽培法の変化などによって土地利用が着実に変化していることがよくあります。

 南スラウェシ州マカッサル(かつてのウジュンパンダン)の華人商店に集まったクミリ。マカッサルはクミリの重要な集積地で、ここからスラバヤへ出荷される。一部は海外にも輸出される。

 南スラウェシ州ルウ県に開園されたアブラヤシ農園で働く労働者。多くは、付近の農民の子弟。プランテーション農業とこれからどんなふうに共存していくのだろうか。

 このような土地利用変化を地域の「履歴」として綴っていくことが、いまわたしが進めている分野です。各地の「履歴」をたくさんファイルして、いずれは東南アジア全体の「履歴」を地域像として描ければよいと思っていますが、道はまだ遠しです。最近、環境史や生態史、そしてポリティカル・エコロジーというような分野が台頭しています。わたしの仕事は、おそらくそういう分野と密接に関連しているようにも思います。たまたまこのページをご覧になった方で、こういう分野に関心がある方は、是非、お知らせください。フィールドワークの経験を共有できることを期待しています。