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第二十四回 「地域の「履歴」を読む−クミリを例に」 | |||
Contents 7.クミリからみた地域の「履歴」 |
7.クミリからみた地域の「履歴」 クミリをめぐる以上のような植林政策があったことを知ったうえで、もう一度クミリの林を眺めてみると、それまでとは違った地域の「履歴」が立ち上がってきます。何も知らずにクミリを眺めているときには、この辺りにはクミリがたくさんあるな、という印象をもつだけですが、こういう歴史を知ってもう一度景色を眺めてみると、クミリの背後に土地利用をめぐるさまざまな葛藤が、住民内部、そして住民と政府とのあいだにあったことが想像できるようになります。そして、その大きな背景として、クミリを必要とする外部の需要があったことは言うまでもありません。
さらに詳しくクミリについて調べていけば、土地利用境界(たとえば、政府が管理する森林地帯と住民が利用する私有地・共有地などの境界)や土地の所有・使用権、資源管理をめぐる社会構造、生産物の利用や流通を通じての経済構造などなど、さまざまな問題が浮かび上がってきます。そうすると、住民が「クミリはずっと昔から栽培していた」と言っていたのが、実は、かつてはほんの数本ずつを植えていただけで、いまのように面的にクミリの林になったのは、戦前のことだったとか、あるいはごく20年前くらいだった、というようなことが明らかになってきます。クミリを通じて、地域の「履歴」が明らかになるというのはこういうことです。
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