南部アフリカにおける国家-地域の動態と資源利用の実態に関する地域間比較研究 (2010)



概要

 アフリカ農村部の人びとは、脆弱な自然環境や政治・社会変動など、様々なリスクに晒されている。このような状況のなかで、人びとは自然資源や土地、社会関係などといった広義の資源を利用し、自らの生活を成り立たせている。共同研究のメンバーは、これまで南部アフリカ各地において地域住民による資源利用の実態に関する調査をおこなってきた。本共同研究では、メンバーがこれまで明らかにしてきた各調査地での資源利用の実態が、国家政策の変動や地域の歴史、そして地域固有の論理とどのように関係しているかに焦点をあて、それらを南部アフリカの文脈の中で比較・検討していくことを目的としている。
 対象としている南部アフリカは、植民地時代から共通する歴史的経験により「南部アフリカ」としてまとまりを持つ一方で、その差異を顕在化させながら現在に至っている興味深い地域である。特に、南アフリカにおけるアパルトヘイト体制の崩壊以降、域内の政治・経済的な紐帯は急速に強まりつつある。これらのマクロレベルでの政治・経済変動は、ローカルな人びとをも巻き込み重層的に展開していると考えられる。本共同研究は、このような状況をふまえ、農村部の人びとの資源利用を閉鎖的にとらえるのではなく、国家政策や南部アフリカの他地域における動向といった外部要因、そして地域がこれまで経験してきた変化や地域固有の論理といった内的要因を関連させながら重層的に理解することを目指す。さらに、ナミビアの首都・ウイントフックで実施する報告会などを通して南部アフリカ各地の研究者研究者と情報交換や議論をすることで、新たな研究課題の発見や各自の研究テーマの更なる発展にもつながると考えている。

研究報告会

研究報告会
2010年11月20日 ナミビア
Program (English) 〈 ポスター表面ポスター裏面

研究報告書

目次

1. Introduction
2. Land Expansion and Social Dynamics in a Resettlement Area in Zimbabwe
Takehiro IDO
3. Existing Natural Resources and its Use by Local People in the Muyako Community Forest, North-Eastern Namibia
Chisato YAMASHINA
4. Examining the Process of Household Differentiation:
A Case Study of People Engaging in Small-scale Commerce in Rural Zambia
Chihiro ITO
5. Current Condition of Livestock Herding and Utilization of the Livestock Auction in Former Damaraland, North-Western Namibia
Koki TESHIROGI
6. Afterword

メンバー

氏名調査地研究テーマ
伊藤千尋
(研究代表)
ザンビアアフリカ農村部における資源と生業活動へのアクセス性にみる移動の機能
手代木功基 ナミビアナミビアのモパネ植生帯における、牧畜活動を通してみた自然環境と人間活動の関係
山科千里ナミビアナミビア北部、モパネ植生帯におけるシロアリ塚と植生の関わり
井戸雄大ジンバブエジンバブウェ農村における再入植計画をめぐる地域社会の動態に関する研究