第217回 「メルマガ写真館」
第217回 「メルマガ写真館」
「うたたね」
池上羽乃(グローバル地域研究専攻)
トルコの海沿いの街、イズミル。ここが私の去年の滞在先だ。飛行機の時差ボケで昼から夕方までバルコニーで包み込むような夕陽と爽やかな潮風を感じながら、安心して気づくと私は眠り込んでしまっていた。ふと、香ばしい香りが鼻に届いた。と同時にキッチンの方から私を呼ぶ優しい声が聞こえ、私はゆっくりと目を開けた。私が来る前に行きつけの肉屋から仕入れた羊の肉を丁寧にばらし下準備をした上で、家族みんなで私の喜ぶ顔を考えながら肉を丁寧に串に刺していったようだ。キッチンに向かうと滞在先の父はこう言った。
「よく来たね。私の魂、私の娘よ。よく休めたかい?もうすぐ焼き上がるからね」
トルコでは、家族やパートナーなど、特に大事な人に対して「can(魂)ım(私の)」という呼称をよく使う。ありがたいことに滞在先の家族は、私のことをまるで小さい娘のように大切にしてくれる。焼き上がった肉を皿に取り分け、家族みんなが揃ってから食べ始める。調味料で誤魔化すのではなく、肉自身の持つ水分と油の旨みが活かされており、食べ物を”味わうこと“の喜びを思い出した気がした。サラダにはブドウの酢を使っており、酸味と爽やかさでするりとお腹に入る。美味しい料理と温かい家族の愛とでお腹も心も満たされた小さい娘は、料理の匂いにつられて集まってきた野良猫のように丸まり、またソファで眠り込んでしまったのであった。
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