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第176回 「メルマガ写真館」

第176回「メルマガ写真館」
「コロナから離れた森での甘い時間」
関野 文子(アフリカ地域研究専攻)

ここは村から歩いて50kmも離れた深い森、みんなが大好きな蜂蜜を採集しています。昨年の3月末、カメルーンの狩猟採集民バカのキャンプに滞在したときのことです。

奥の男性が切り倒した木から蜂蜜をすくい出し、手前の男性はつるをハケ代わりにしてチュウチュウと美味しそうに食べています。周りの少年たちはたっぷりの蜜を、葉をお皿にして受けとっています。これはダンドゥと呼ばれるサラリとした液状の蜂蜜です。バカの人々にとって、蜂蜜はこの時期の重要なエネルギー源でもあります。

実はこの前日、滞在していた森のキャンプに日本から緊急の伝令が届きました。新型コロナウィルス感染症が世界中で急速に拡大しており、国境が封鎖されたことを知りました。それを受けてか、バカの古老が100人あまりのキャンプの成員に「落ち着いて過ごそう」というメッセージを発信していました。

あと何日ここでみんなと一緒に過ごせるのか、この先どうなるのか。そんな私の不安と現実味のない危機感をよそに、遠い森での甘く穏やかな時間をしばし味わいました。世界中が大変だけれど、まずは落ち着いて、目の前に流れる日常をかみしめようと思いながら。



写真:筆者がもらった蜂蜜

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