第174回「メルマガ写真館」
「川沿いの夜の公園で」
皆木 香渚子（東南アジア地域研究専攻）

　ベトナムでの生活に少し慣れてきた頃のある夜、現地の友人に連れられて川沿いの公園を訪れました。原色のネオンカラーにライトアップされた橋や遊覧船の煌びやかな光が広大な水面を彩っていました。夜景を眺めて異国情緒に浸っていると、おもむろに友人から小さな灯篭を手渡されました。振り返ると、裏紙をせっせと折って灯篭を作っている若者たちがいました。灯篭をもらったお礼を言うと、「日本人？」「ベトナムは楽しい？」「ベトナム語喋れるの？」と矢継ぎ早に質問が飛び、気づけば一緒に灯篭づくりをしていました。
　ろうそくを灯した出来立ての灯篭を川に流す時に「何をお願いするの？」と尋ねられました。「この国をもっと知ることができますように。」
　フィールドでは一期一会という言葉を身に染みて感じます。街の活気や人と人との距離の近さといった肌感覚を超えて調査地をもっと深く知りたいと思った夜でした。

写真１: 灯篭づくりに勤しむ若者たち

写真2: 川に流した灯篭