第167回 「メルマガ写真館」
第167回「メルマガ写真館」
「華を纏う」
小寺 典子(アフリカ地域研究専攻)
ベナン南部の調査地の教会では、毎週日曜日、礼拝が始まる朝9時ごろになると、写真のような色鮮やかで多様な模様の衣服を身につけた人々が大勢集まります。この礼拝に初めて参加したとき、私はその華やかな光景にとても驚かされました。
街に点在する仕立屋さんでは、フランス語でpagne(パーニュ)と呼ばれるたくさんの布地の中からお気に入りの1枚を買って、仕立てを依頼することができます。依頼したデザインにもよりますが、早ければ2日以内でこのような衣服を手にすることが可能です。街では、既製服を着ている人も少なくありませんが、教会では仕立服を身につけている人が圧倒的に多いです。また葬儀の際には、参列者が同じ布地で衣服を仕立てることもあるという話も聞きました。一方、日常生活の場面では、女性たちが布地をそのまま腰に巻いて家事仕事を行う姿も見られました。
調査期間中、私も布地を選んで仕立ててもらう機会がありました。日本で服を選ぶ時には、あまり時間をかけずにシンプルなものばかり選んでしまいますが、ベナンで服を仕立てた時は、布1枚1枚の色使いや模様を見比べ、時間をかけてデザインを選びました。こうして迷いながら選んでいくという経験は、とても新鮮でした。カラフルで豊かな模様の布や、それを着こなすベナンの人々の姿には、どの布地を見ても、それを着てみたいと思わせてくれる、不思議な魅力があります。