第164回 「メルマガ写真館」
第164回「メルマガ写真館」
「見られない動物を見る」
南 倉輔(アフリカ地域研究専攻)
森の中で野生動物を見るのは難しいことです。私の調査地であるカメルーンの熱帯林はコンゴ盆地に繋がる生物多様性の高い地域なのですが、森を歩いているときに動物を見ることは稀です。特に、調査対象である食肉目を肉眼で観察することはほぼ不可能と言えます。その理由は食肉目が主に夜行性であり、かつ個体数が少ないためです。しかし、だからといって見ることを諦めるのもまた困難です。そのため、私は自動撮影カメラを用いて調査をしています。カメラの前を哺乳類や鳥類が横切ると、センサーが体温を感知して写真を撮影するしくみになっています。熱帯林の広大な面積に何十個ものカメラを設置することで、見ることができない動物を見るのです。2か月ほどカメラを稼働させると合計2万枚以上の写真が撮影されます。そこには食肉目以外の動物も沢山写っていて、必ずしも対象の動物が写っているわけではありません。しかし、その中から目的の動物を探し当てたとき、涙が出るほど報われた気持ちになります。そしてまた、カメラを置きに森へ行くのです。
写真1. カメラがとらえた食肉目
写真2. カメラトラップ
写真3. 森林愛に点在する草原地帯「バイ」
写真4. ゾウの足跡と28.5cmの筆者の足
写真5. ヒョウの足跡(おそらくオス)