「アジア・アフリカ地域研究情報マガジン」バックナンバー
メールマガジンバックナンバー■■■ January 2015 第139号 ■■■■■■■■■■■■■■■■■■
アジア・アフリカ地域研究情報マガジン
Integrated Area Studies INFOrmation Magazine(IAS-INFOM)
http://www.asafas.kyoto-u.ac.jp/
■■■■■■■■■■■■■■■■■■【発行部数 1161 】■■■■■
____________今月号の目次______________
□「ここにエボラはありません」 .................フィールド便り
□「エボラを撃退する祈り」 ...................メルマガ写真館II
□お知らせ .............................入試情報、公募情報など
□アフリカ地域研究資料センター情報 .........講演会のご案内など
□編集子より
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■フィールド便り
~みる・きく・ふれる:アジアとアフリカのフィールドから~
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「ここにエボラはありません」
.......................片桐昂史(アフリカ地域研究専攻)
西アフリカにおけるエボラ出血熱の流行は、2013年12月にギニア南部で
はじまりました。2015年1月5日現在、20,875名が感染し、8,265名の死
亡が確認されています。わたしは、ギニアの隣国であるセネガルで塩づ
くりとマングローブ植生による地形環境の変遷に関する調査をしており、
当初からメディアの報道に目を通していましたが、セネガルへ感染が拡
大するとは、思っていませんでした。
渡航を3日後にひかえた2014年8月29日、セネガルでエボラ出血熱の感染
者が確認されました。わたしは、エボラ出血熱にたいする直感的な恐怖
を感じ、準備を重ねてきた渡航が中止になってしまういやな予感がしま
した。自分ではどうすることもできない事態に、不安は膨らみました。
翌日、研究科関係者による緊急対策会議において、渡航の延期が決まり
ました。状況次第で中止を見込んだ渡航の延期は、ありがたいものでし
た。考えてみれば、私が所属するアフリカ専攻では常備薬についてのセ
ミナーが毎年おこなわれ、予防のたいせつさを学びます。エボラ出血熱
は、マラリアをはじめとする他の病気となにが違うのか。渡航の延期を
受けて、エボラ出血熱の正しい知識と対処方法を身につけるたいせつさ
に気がつきました。エボラ出血熱は、感染したヒトの血液、分泌物、臓
器、その他の体液に、傷のある皮膚や粘膜を介して直接的・間接的に接
触することで感染し、空気感染はしないこと、現時点で承認された治療
薬がないこと、また、エボラ・ウイルスにはエンベロープ(envelope)
という膜があり、現場での予防としてその膜をこわすアルコールや石鹸
による手洗いに効果があることを再確認しました。
その後、心配されたセネガル国内での二次感染もなく、延期した日程で
渡航できることになりました。たくわえたエボラ出血熱についての予備
知識は直感的な恐怖をじゅうぶん振りはらいましたが、調査地で今まで
通り暮らせるのか、セネガルへ向かう機内でわたしは不安を感じていま
した。
「ここにエボラはありません」
わたしの表情をよみとったか、これが家長の第一声でした。人びとはエ
ボラの流行について知っていて、みな「エボラはよくない」と口をそろ
えました。話を聞くと、発生時もとくに混乱はなく、かわらぬ日常を過
ごしていたそうです。
セネガルの日常は、人びとのおしゃべりとともにあります。ある日、
「エボラには石鹸の手洗いが効く」と話すと、家族は用をたした後の手
洗いをからかいました。「これはいつものことだ!」と応じると、笑み
がこぼれました。ある夜、わたしが街灯によってきた甲虫を捕まえると、
「その虫はエボラをもっているから、手を洗え!」といい、ともに笑い
ました。
メディアの報道と照らしあわせると、こうしたおしゃべりは不謹慎にみ
えるのかもしれません。しかし、わたしは、セネガルの人びとはこうし
たおしゃべりを通じて、隣国あるいは隣町の惨劇を語り、伝えながら、
受けとめているのではないかと思います。なにより、わたしの不安はや
わらぎました。日常的なおしゃべりを通じて、“からかい”や“冗談”
まじりに惨劇をも、語り、伝え、受けとめる彼らが、たくましくみえま
した。
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ご覧いただけます。
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■メルマガ写真館II ~フィールドで出会う~
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「エボラを撃退する祈り」.........池邉智基(アフリカ地域研究専攻)
国内の約9割がムスリムというセネガル共和国。その中で絶大な勢力
を持つムリッド教団のトップ「カリフ・ジェネラル」から信徒たちへ、
ある祈りが行われ...
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(写真とエッセイの続きは上記HPでご覧いただけます)
↓「メルマガ写真館」バックナンバー
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■お知らせ
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□ 京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科(ASAFAS)
入試情報
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◆平成28年度入試日程
第1回試験日程:平成27年7月25日(土)、26日(日)
第2回試験日程:平成28年2月8日(月)、9日(火)
東南アジア地域研究専攻・アフリカ地域研究専攻のみ
詳細は以下のサイトへ
http://www.asafas.kyoto-u.ac.jp/admissions/application
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□博士論文公聴会のお知らせ
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博士論文の公聴会が開催されます。
詳細 >>
http://www.asafas.kyoto-u.ac.jp/news/announcements/3939
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□ 出版情報
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◆『アジア・アフリカ地域研究』第14-1号が発行されました。
研究科ウェブサイトにて、論文PDFをご覧いただけます。
詳細 >>
http://www.asafas.kyoto-u.ac.jp/research/publications
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□ ASAFAS附属 現代インド研究センター 情報
http://www.indas.asafas.kyoto-u.ac.jp/
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◆研究会
【KINDAS】シリーズ・総括と展望「五年間で考えたこと-その3<多様性>
【日 時】2015年1月25日(日)13:00-17:00
【場 所】京都大学稲盛財団記念館 小会議室II
詳細 >>
http://www.indas.asafas.kyoto-u.ac.jp/kindas/seminar/kindas_20140125/
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◆研究会
【KINDAS】第31回 南アジア・インド洋世界研究会/KINDASセミナー
「ヒマーラヤ地域研究の現在」
【日 時】2015年2月2日(月)13:00-17:50
【場 所】京都大学吉田本部構内総合研究2号館4階大会議室(AA447)
詳細 >>
http://www.indas.asafas.kyoto-u.ac.jp/kindas/seminar/kindas_20150202/
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◆研究会
【KINDAS】シリーズ・総括と展望「五年間で考えたこと-その3<多様性>
【日 時】2015年2月21日(土)13:00-17:00
【場 所】京都大学稲盛財団記念館 小会議室I
詳細 >>
http://www.indas.asafas.kyoto-u.ac.jp/kindas/seminar/kindas_20150221/
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□臨地教育支援センター プログラム情報&フィールド・ワーク報告
http://www.asafas.kyoto-u.ac.jp/shien/
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今年の夏のフィールド・ワークの報告書が続々とアップされています。
とてもホットな調査報告をぜひご一読ください。
新着学生レポートは以下のサイトへ
http://www.iasu.kyoto-u.ac.jp/
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■京都大学 アフリカ地域研究資料センター HP掲載情報
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□講演会のご案内
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◆セミナー
第33回 KUASS(Kyoto University African Studies Seminar)
日時:2015年2月2日(月) 15:00~17:00
会場:京都大学稲盛財団記念館3階中会議室
講師:Roger Blench 博士(ケイ・ウィリアムソン教育財団)
詳細 >>
http://www.africa.kyoto-u.ac.jp/
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◆公開講演会「現代アフリカの暴力を考える」
日時:2015年01月24日(土) 15:00~17:00
会場:京都大学稲盛財団記念館3階 大会議室
講師:白戸圭一(三井物産戦略研究所)
詳細 >>
http://www.africa.kyoto-u.ac.jp/
参加無料・事前申込不要
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□研究会のご案内
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◆アフリカセンター第208回地域研究会
「アフリカの植民地近代性─そこからの再考」
日時:2015年1月22日 (木) 15:00~17:00
場所:京都大学稲盛財団記念館3階 中会議室
講師:小馬徹(神奈川大学・教授)
詳細 >>
http://www.africa.kyoto-u.ac.jp/
参加無料・事前申込不要
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□Twitter 情報
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京都大学アフリカ地域研究資料センター
・・・京都発のアフリカ研究関連情報を発信していきます。
http://twitter.com/Africa_Kyoto_U
http://twilog.org/Africa_Kyoto_U(ツイートをブログ形式で表示)
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□メールマガジンに対するご意見・ご感想お待ちしております。
http://form.mag2.com/gianoubima
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◆編集子より◆
2014年はエボラ出血熱対策に翻弄された一年でした。幸い、集中感染地
のギニア、リベリア、シエラレオネの3国で調査中あるいは調査予定の
ASAFAS院生はいませんでしたが、隣国のセネガル、マリで発生し短期間
に終息した飛び火感染、コンゴ民主共和国での別種ウィルスの流行の際
には、数人の院生が調査期間を短縮し帰国、あるいは渡航を延期すると
いった影響を受けました。今回のエボラ騒動は、設立以来、重大な問題
意識を持って整備してきたASAFASの危機管理体制が試されたケースでし
たが、渡航者の生命・健康を最優先した迅速な意志決定により、冷静か
つ適切な対応ができたと思っています。今号の「フィールド便り」と
「メルマガ写真館」は、エボラに翻弄されながら、たくましく現地の雰
囲気を感じてきてくれた院生からのレポートです。いま、エボラ感染地
域の人びとに対する差別視が、stigmatizationと呼ばれ問題化していま
す。発生地のギニア共和国についていえば、2015年1月6日現在で、2,782
名の感染者が報告されていますが、この数はギニアの総人口約1,000万人
の0.03%にすぎません。感染者に関する悲劇的な報道の背後に、他のほと
んどすべての人びとが平穏に暮らしているという事実を想像することは
容易ではありません。しかし311の原発事故の際に海外から同様の視
線に曝されたわたしたちには、さほど難しいことではないはずです。地
域研究者として、現地の人びとの視点に立った想像力を忘れずに、これ
からもエボラの悲劇の現実に対峙していきたいと思います。(GY)
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◆このメールマガジンは、京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究
研究科(ASAFAS)広報委員会、ASAFASキャリア・ディベロップメント
室、ASAFASフィールドワーク・インターンシップ支援室より発行して
います。
◆ご意見・ご感想を以下フォームよりお気軽にお寄せください。
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編集/発行:
京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科(ASAFAS)
広報委員会
ASAFASキャリア・ディベロップメント室
京都大学学際融合教育研究推進センター・総合地域研究ユニット
臨地教育支援センター(IASU)
協力:
京都大学 アフリカ地域研究資料センター
http://jambo.africa.kyoto-u.ac.jp/
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