「アジア・アフリカ地域研究情報マガジン」バックナンバー
メールマガジンバックナンバー■■■ January 2012 第103号 ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
アジア・アフリカ地域研究情報マガジン
Integrated Area Studies INFOrmation Magazine(IAS-INFOM)
http://www.asafas.kyoto-u.ac.jp/
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■【発行部数 1074】■■■
___________今月号の目次_________________
□「言語を巡る旅―マヨット島(フランス海外県、インド洋コモロ諸島)」
..................フィールド便り
□「揚魚売り、はじめました」..................メルマガ写真館II
□お知らせ..............................アフリカ研究最前線など
□GCOE情報................GCOE研究会情報、大学院生派遣報告
□セミナー情報
□編集子より
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■フィールド便り
~みる・きく・ふれる:アジアとアフリカのフィールドから~
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「言語を巡る旅
―マヨット島(フランス海外県、インド洋コモロ諸島)」
..........西本希呼(東南アジア地域研究専攻)
今回は、アフリカ大陸とマダガスカルの間に浮かぶ小さな島、
フランス海外県マヨット島を紹介します。マダガスカル語研究に
従事している私は、マダガスカル以外で、マダガスカル語が話さ
れている島を見るために訪問しました。
マダガスカル西海岸から300km離れたマヨット島(面積374平方
キロメートル、西表島の約1.3倍)に、約19万人の人々が暮らし
ています。大島と小島の2つからなり、国際空港のある小島から
大島へ船が30分おきに運行しており、大島の港には、隣国コモ
ロ連合のみならず、ヨーロッパ行きの国際船が出入りしています。
地理学的には、モザンビーク海峡の4つの島からなるコモロ諸島
の一部ですが、マヨットは他の3つの島と異なり独立国家コモロ
連合の一部としてではなく、フランスへの帰属を選びました。
マヨットでは、同じくフランス海外県であるレユニオンから移住
してきた家族経営の民宿にお世話になりました。当初、宿が見当
たらず、仏語やマダガスカル語が通じず村で途方にくれていたと
ころ、隣村の民宿経営者に拾われ、そこに滞在することになりま
した。私の帰宅が遅くなった日は、宿の家族皆で島中を探して下
さり、夕食には毎晩レユニオン料理のカレーを出してくれました。
マダガスカル出身のVezo族が、漁撈活動の傍ら、Sable blanc
(白い砂)という、色鮮やかな魚が足下を泳ぐ珊瑚礁の離島へ案内
してくれました。
コモロ系移民のバス運転手は、「遠い日本からマヨットの言葉に
興味を持って来てくれた人から、代金なんてとれない」と言い、
毎日乗客を乗せながら、島をタダで案内してくれました。行政中
心都市マムズから、わずか20分程の間に、運転手と乗客の言葉
は、仏語、マオレ語、マダガスカル語と次々に変わっていきます。
運転手は、「ここはマダガスカル人地区だ、次はマヨット人地区だ」
と、親切に教えてくれました。車内での島民の会話は、もっぱら
マオレ語とマダガスカル語ですが、挨拶や近況報告を仏語で会話
する光景も見られます。ケニアからのスワヒリ語のラジオ放送を
聞いているという人もいます。
島には、マオレ語地域、マダガスカル語地域、コモロの諸言語の
地域、2言語併存地域、多言語地域、と話者別の様々なコミュニ
ティが形成されています。どうやら、私がマヨットに到着当初に
迷子になった村は、マオレ語地域だったようです。
今までの話をまとめると、マヨットでは、Shimaore(マオレ語)と
Shibushi(マダガスカル語)が主な現地語として併存し、日常的な
意思疎通の手段として用いられています(Shi-は「~語」という意
を表すバンツー起源の接頭辞)。Shimaoreはマオレ(マヨット人)
の言葉でバンツー系に属し、Shibushiはマダガスカル語の方言です。
これら2つに並び、バンツー系のShindzuani(アジュアン島の言語)、
Shingazidja(グランドコモロ島の言語)、Shimouali(モヘリ島の
言語)の3つのコモロ語の変種がコモロ系民族の間で話され、そし
て本国の言語である仏語が公用語としての地位にあります。つまり、
この小さな島に、少なくとも合計6つの言語、すなわちニジェール
-コンゴ語族(Shimaore、Shindzuani、Shingazidj、Shimouali)、
オーストロネシア語族(Shibushi)、インド-ヨーロッパ語族(仏語)
の3種類の異なる系統の言語が話されているというわけです。
短い期間でしたが、実に多民族、多言語に触れ、温かな人々と出会
いました。世界を旅する人はもちろんのこと、バンツー諸語の文化
圏を知る人や、マダガスカルを知る人にとっては、よりいっそう魅
力ある島に間違いありません。
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■メルマガ写真館II ~フィールドで出会う~
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「揚魚売り、はじめました」
.........神代ちひろ(アフリカ地域研究専攻)
私の調査地ブルキナファソのパラコ村は、自給自足をベースと
した生活が営まれている農村です。ある日、お世話になってい
る家のお母さん(写真右奥)が、身重の体で新しい商売をはじ
めました。大量に仕入れた川魚を、素揚げにして販売するとい
うものです・・・
http://www.asafas.kyoto-u.ac.jp/mm/2012_01.html
(写真とエッセイの続きは上記HPでご覧いただけます)
↓「メルマガ写真館」バックナンバー
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お知らせ
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□アフリカ研究最前線
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□アフリカ地域研究資料センター8回連続公開講座
「アフリカ研究最前線:出会う」
http://jambo.africa.kyoto-u.ac.jp/~front-a/
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今回のシリーズでは、アフリカ研究をする私たちが、いつ
どのようにして、その研究テーマに出会い、なぜそのよう
な研究をするようになったのか、その糸口となったフィー
ルドでのさまざまな出会いから、現在の研究に至るまでの
過程とその成果をお話します。
◆第2回「暮らしを守る女性の知恵に出会う」
タンザニアの農村には思いがけない食材があふれていました。
半年にわたる乾季をおいしく過ごす、女性の知恵について
お話します。
詳細>>
http://jambo.africa.kyoto-u.ac.jp/~front-a/20120218.html
日 時:2012年2月18日 15:00~17:00
会 場:京都大学稲盛財団記念館3階 中会議室
http://jambo.africa.kyoto-u.ac.jp/~front-a/access.html
講 師:近藤 史 (京都大学アフリカ地域研究資料センター 助教)
受講料: 1講座 ¥1,000
※全8講座中、4講座以上お申し込みいただく場合は
1講座あたり¥800 になります。
※定員50名、先着順
登録フォーム
http://jambo.africa.kyoto-u.ac.jp/~front-a/form.html
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□Twitter 情報
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京都大学アフリカ地域研究資料センター
・・・京都発のアフリカ研究関連情報を発信していきます。
http://twitter.com/Africa_Kyoto_U
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□メールマガジンに対するご意見・ご感想お待ちしております。
http://form.mag2.com/gianoubima
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■京都大学 G-COE プログラム
:生存基盤持続型の発展を目指す地域研究拠点HP掲載情報
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■1月開催の研究会※研究会活動の記録掲載をすすめています。
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■国際シンポジウム
[2012-01-12] Forest Conservation and International Climate Policy
http://www.humanosphere.cseas.kyoto-u.ac.jp/ article.php/20120112-13
[2012-01-15] 国際ワークショップ「タケの利用による持続性の ある地域開発」
http://www.humanosphere.cseas.kyoto-u.ac.jp/ article.php/20120115
[2012-01-28] International Workshop
http://www.humanosphere.cseas.kyoto-u.ac.jp/ article.php/20111202144355898
■イニシアティブ1研究会
[2012-01-21] [2011年度第2回合同研究会]
http://www.humanosphere.cseas.kyoto-u.ac.jp/ article.php/20120126114902372
◇シンポジウム/研究活動の記録 一覧
http://www.humanosphere.cseas.kyoto-u.ac.jp/ staticpages/index.php/gcoe_report_list#IC30
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■大学院教育
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□GCOE大学院派遣報告(2011年度)
◆「19世紀における東南アジア地域経済の発展と域内交易の役割」
....小林篤史(ASAFAS グローバル地域研究専攻)
本研究の目的は、これまで欧米による植民地化や、アジア国際
分業体制の枠組みで分析されてきた19世紀後半の東南アジア
地域経済の発展を、新たに東南アジア域内交易の視点から考察
することである・・・
http://www.humanosphere.cseas.kyoto-u.ac.jp/ article.php/2011_fs_kobayashi_j
◆「バンコク国立博物館のコレクション形成史に関する研究」
....日向伸介(ASAFAS 東南アジア地域研究専攻)
本研究の目的は、バンコク国立博物館のコレクションが形成さ
れた過程を明らかにすることである。ただし、数万件に及ぶコ
レクション全体の歴史をまとめて対象とすることは難しい。し
たがって、博物館の基本方針が現在に近いものへと定めら・・・
http://www.humanosphere.cseas.kyoto-u.ac.jp/ article.php/2011_fs_hinata_j
◆「ザンジバル・ストーンタウンにおける
アラブ移民ハドラミーの社会階層性」
....朝田郁(ASAFAS アフリカ地域研究専攻)
本研究は、東アフリカのザンジバルにおいてイエメン人移民たち
が持つ超国家的ネットワークを、イスラーム的価値観、血統、
社会階層、アイデンティティーを軸に考察することを目的とし
ている。ザンジバルのアラブには、オマーン系とイエメン系がい
るが、前者は割合としては限られ・・・
http://www.humanosphere.cseas.kyoto-u.ac.jp/ article.php/2011_fs_asada_j
>>大学院派遣者報告リスト(2011年度)
http://www.humanosphere.cseas.kyoto-u.ac.jp/ article.php/2011list
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■セミナー情報....2月のおもな地域研究関連の研究会情報
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[2012-02-03]「インドネシア・リアウにおける熱帯バイオマス社会再生の
ための文理融合フィールドワーク」[東南アジアの自然と農業研究会 第154
回定例会](イニシアティブ3)
http://www.humanosphere.cseas.kyoto-u.ac.jp/ article.php/20120203_ini3
[2012-02-03]"Globalization and socio-economic change in Nepal"
[The 16th. South Asia and Indian Ocean Studies Seminar]
http://www.humanosphere.cseas.kyoto-u.ac.jp/en/ article.php/20120126170148855
[2012-02-04] [第8回ジャカルタ都市研究会]
http://www.humanosphere.cseas.kyoto-u.ac.jp/ article.php/20120126113838234
[2012-02-07]「地域研究とキャリアパス ―地域研究者の社会連携を 目指して―」
[2011年度地域研究コンソーシアム「地域研究次世代ワークショップ」]
http://www.humanosphere.cseas.kyoto-u.ac.jp/ article.php/20120127174023597
[2012-02-11] [第18回近畿熱帯医学研究会]
http://www.humanosphere.cseas.kyoto-u.ac.jp/ article.php/20120126123235582
[2012-02-14]International Workshop (国際集会・国際シンポジウム)
http://www.humanosphere.cseas.kyoto-u.ac.jp/ article.php/20111031120815830
[2012-02-16]「コートジボワールに見る紛争解決のジレンマ」
[第186回アフリカ地域研究会]
http://www.humanosphere.cseas.kyoto-u.ac.jp/ article.php/20120216
[2012-02-24][第7回CAAS国際フォーラム]
http://www.humanosphere.cseas.kyoto-u.ac.jp/ article.php/20120224
[2012-02-24] Joint-Seminar "Linguistic perspectives on the history
of Southeast Asia"
http://www.humanosphere.cseas.kyoto-u.ac.jp/ article.php/20120126104919497
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◆編集子より◆
いまASAFASでは、博士論文や博士予備論文(修士論文に相当します)の
公聴会が連日開催されています。入学以来積み重ねてきた研究の成果を、
厳しい先生や鋭い先輩たちの前で発表する一大舞台です。発表準備が忙
しくなってくると、研究室で不健康な食生活を送りながら、毎日一人で
机に向かいます。そんなとき、フィールドでの食事の場面を思い返すこ
ともあるのではないでしょうか。たとえば、マヨット島の民宿で食べた
宿主の故郷レユニオンのカレーや、ブルキナファソの農村で味わったお
母さんの手作り川魚スープ。私が思い返すのは、エチオピアにくらす牧
畜民の友人宅で汗をだらだらかきながら飲み続けた山羊スープ。フィー
ルドで出会った忘れられない味や人びとに思いをはせてみると、もう少
しだけ発表準備をがんばろう、という気力も湧いてくるのでした。(TS)
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研究科(ASAFAS)広報委員会、ASAFASフィールドワーク・インターン
シップ支援室より発行しています。
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編集/発行:
京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科(ASAFAS)
広報委員会
ASAFASフィールドワーク・インターンシップ支援室
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協力:
京都大学 G-COEプログラム:生存基盤持続型の発展を目指す地域研究拠点
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