アジア・アフリカ地域研究情報マガジン:メルマガ写真館
第151回 「メルマガ写真館」
ビリヤニと鍋とカースト
... 久保田和之(グローバル地域研究専攻)
この写真は、インドの西部のマハーラーシュトラ州の文教都市プネーのカスバパトという集落で撮ったものです。職人たちが作っているのはハンディというビリヤニ(中東から東南アジアにかけて親しまれている炊き込みご飯)等の調理に使う銅製の鍋です。ビリヤニのように全体をむらなく、ふっくらと炊き上げるには、熱伝導率の良い銅製の鍋が最も適しています。
この集落は銅製品を歴史的に作ってきたワシュタ・カサールカースト(カースト:インドの社会集団。結婚、食事、職業などと強い関係を持つ)が住んでおり、集落には、銅製の水差し、皿、鍋等を作る工房がひしめいています。ただ、最近は家業を継ぐ人が少なく、職人の高齢化が進んでいます。製品も国内市場向けで、ワシュタ・カサールのカーストからは輸出を行う者はいませんでした。しかし、アメリカでワシュタ・カサールの留学生がインターネットを通じて銅製品を販売しようとしています。高齢化する集落に変化は訪れるのか。見守っていきたいです。