アジア・アフリカ地域研究情報マガジン:メルマガ写真館

 

第136回 「メルマガ写真館」

「共存する祈り ―ヨルダンの夜景から―」
... 池端 蕗子(グローバル地域研究専攻)

 

 ヨルダンは、パレスチナ、シリア、イラクといった動乱する国々と国境を接しながら、国内の平和を保っている小さな国です。2016年夏、私はヨルダンの首都アンマンからバスで1時間ほど南に位置する都市マダバを訪れました。ヨルダンでは2~6%ほどのキリスト教徒がムスリムと共存しています。特に都市マダバには他の地域と比べて多くのキリスト教徒が暮らしています。マダバでは、1日5回モスクから大音量で流れるアザーン(礼拝の時刻を告げる声)に加え、キリスト教会からも朝夕にカランカランと鐘の音が響き渡ります。夜風に吹かれようとベランダに出ると、モスクもキリスト教会の鐘塔も、綺麗にライトアップされていました。宗教の違いを理由にした痛ましい出来事が多く聞こえてくるこの時代において、夜闇に2つの祈りが静かに並び立ち、光り輝く姿は、希望の灯にも見えるのでした。