アジア・アフリカ地域研究情報マガジン:メルマガ写真館
第126回 「メルマガ写真館」
「貼ってふさぐ、貼って治す」
...白石 奈津子(東南アジア地域研究専攻)
日本でもおなじみの湿布薬「サロンパス」。フィリピンでも大人気の製品です。よくお土産にもせがまれるのですが、実は、フィリピンではサロンパスの主成分であり、鎮痛・消炎作用をもつサリチル酸メチルが、小瓶に入った状態で売られているのです。サロンパスを一枚、二枚と買うよりも、ずっと安く手に入るのに、フィリピンの人たちはサロンパスが大好きなのは、なぜだろう…。長い間、不思議に思っていました。
ある日、頭痛に悩む友人からサロンパスを頼まれた私は、雑貨店で小袋入りのものを購入し、彼女の家をたずねました。友人は喜び、それを小さく切って、額、こめかみ、うなじにペタペタと貼っていきます。そして彼女は、サロンパスが「タパルにちょうどよい」と説明してくれました。
タパルとは、タガログ語で【継ぎあて】を意味し、フィリピンの民間療法では、このタパルと呼ばれるまじないを書いた紙を、額やこめかみ、胸部に貼ります。これを貼っている人(=治療中の人)には「どうしたの、穴が開いてるじゃない?」と冗談っぽく言うのが、お決まりの挨拶でした。
フィリピンで人気のサロンパス。もしかしたらその人気の秘訣は、効能やブランドイメージのみならず、病のあるところに貼ってふさぐ、貼って治すという人々の習慣に親和性が高かったところにあるのかも、と感じた一場面でした。