アジア・アフリカ地域研究情報マガジン:メルマガ写真館
第123回 「メルマガ写真館」
「デモも楽しく?」
...櫻田智恵 (東南アジア地域研究専攻)
「デモ」という言葉を聞いて、みなさんはどんな想像をするでしょうか。武力衝突などを真っ先に想像する人もいるかもしれません。しかし、タイのデモは一味違うんです。
タイでは、2014年に軍事クーデタが発生しましたが、その直接の原因は、何か月もの間、いろいろなグループによるデモが頻発していたことでした。中には、「バンコク・シャットダウン」と銘打って、首都バンコクの中心街を封鎖して歩行者天国化してしまったようなデモもありました。
写真は、2014年クーデタ直前にバンコクの官庁街で展開していたデモ隊の拠点を覗いた時に撮影したもので、デモ会場でポップコーンの店を開いているおじさんです。ポップコーンはなんと無料!頭に巻かれた、デモ隊のスローガンが書かれた鉢巻が、おじさんがデモ参加者であることを、辛うじて示しています。タイのデモは、それと知らなければ一見、ただの祭りのように見えます。デモ会場では、スローガンや指導者が描かれたTシャツやグッズを売る人であふれ、これを商機にと地方からやってきて屋台やコーヒースタンドを開いている人までいました。
とはいえ、実際には、デモの長期化に伴って銃撃や爆破事件もありました。そういった行動は決して容認できません。しかし、一般に報道される壮絶なデモやクーデタの背景に、それらさえ楽しんでしまう市井の人々が居ることを知り、私はこの国の逞しさを実感したのでした。