アジア・アフリカ地域研究情報マガジン:メルマガ写真館

第107回 「メルマガ写真館」

「木の実ひろいの午後」
...小林 大輝(アフリカ地域研究専攻)

 

ガボンの1月は実りの季節です。現地のプヌ語でムイバと呼ばれるブッシュマンゴー(Irvingia gabonensis)は、数ある食用の木の実の中でもとりわけ重要な具材です。種子の中にある仁を乾燥させて砕き、それを肉や魚と煮込む料理がとくに好まれています。

 

ある日、近所のお母さんや子どもと森に出かけました。林床に散らばったムイバの果実を拾い集め、小山をいくつも作っていきます。集めた果実は、その場で鉈を使って2つに割り、白い仁を取り出します。薄暗い森にさわやかな甘い香りが漂います。

 

作業を続けるうちに雲行きが怪しくなってきました。不意に強い風が吹き、鶏卵ほどもあるムイバの実が音を立てながら降ってきます。果実の集中砲火に耐えかねた私たちは、近くの茂みに緊急避難。一息ついたのも束の間、今度は土砂降りの雨が襲いかかってきました。こうなると作業を切り上げるよりほかはありません。みな一様に手編みの籠や布切れ、ビニール袋などをすっぽりと被り、そそくさと村へ逃げ帰りました。道すがら、おかしな格好をした濡れ鼠どうし目が合うと、自然と笑いがこみ上げてきます。小乾季の終わり、深い森の昼下がりの出来事です。