アジア・アフリカ地域研究情報マガジン:メルマガ写真館
第99回 「メルマガ写真館」
「I am yours, I am yours…」
...白石奈津子(東南アジア地域研究専攻)
その日曜日の朝、友人に連れられて向かったのは、とあるプロテスタント系の教会でした。
教会に近づくに連れて聞こえてくるのは、大きな音でギターやドラムをかき鳴らし、マイクで歌う人々の声。
「なんだなんだ、フィエスタ(フィリピンの各地で行われる祭)でもやっているのか」と、思わず笑みがこぼれます。何ということはなく、それは「いつも通り」のミサでした。
フィリピンは、東南アジア唯一、キリスト教徒が人口の大多数を占める国として知られます。それと同時に、フィリピンの人達は、歌や踊りをこよなく愛する人々です。常日頃から、街を歩いても、どこかで誰かが大音量で流すポップミュージックの音色が耳に入ってこないことは、ほとんどありません。
恋人への愛ではなく、神の愛、神への愛をバンドのビートにのせて歌う日曜日の朝。
厳粛な雰囲気を漂わせる立派な聖堂も、美しい歌声を響かせる聖歌隊もそこにはありませんでしたが、神を愛し、思うその精神は、十分すぎるほどに、人々の心に、そして日常に、深く深く溶け込んでいるようでした。