アジア・アフリカ地域研究情報マガジン:メルマガ写真館
第87回 「メルマガ写真館」
「日常に息づく仏教」
...辻田香織(東南アジア地域研究専攻)
旧暦8月の満月の日はブン・カオパンサー(入安居祭)です。この日、多くのラオス人が早朝から寺院を訪れ、托鉢し、読経を聞きます。
お坊さんたちはこの日から3ヵ月間、お寺に籠って修行に励みます。雨季にはいり生き物の動きが活発になるこの時季、草むらの陰に潜む小さな虫たちを踏み潰し無駄な殺生をおこなってしまうことを避けるため、このような慣習が生まれました。
人口のおよそ70%が仏教を信仰するラオス。カオパンサーは休日ではありませんが、みんなこぞってお寺へ行くので学校や仕事への遅刻者が続出します。しかし、それは仏教行事を生活の一部として大切にする彼らにとって「ボーペンニャン(たいしたことない)」なことなのです。大学近くのお寺にて「先生、今日はカオパンサーなので午前中の授業は休講にしてください」という学生からの電話にニコニコと応対する大学の先生を見て、進まない調査と過ぎていく時間に焦るばかりの日々を反省し、私も読経に耳を傾けました。