アジア・アフリカ地域研究情報マガジン:メルマガ写真館
第75回 「メルマガ写真館」
「正月を祝う」
...佐野航平(東南アジア地域研究専攻)
まさかラオスの山奥で搗きたての餅を食べることが出来るとは、日本を出発するときには全く思っていませんでした。
ラオス北部をはじめ、中国雲南省南部、タイ北部、さらにミャンマー、ベトナムの山地部にも暮らしているアカの人達。彼らの正月は西暦の12月にあります。一緒に祝っている時に皆で搗いていたのは餅です。搗きたての餅は熱々の懐かしい味。出来た餅はエゴマの粉をまぶし、丸い形に整えて、干します。硬くなった餅は焚火で焼いて食べます。エゴマの風味を楽しむにはそのままで、砂糖をまぶして食べてもまた美味しい。
日本でも正月には餅を搗くよと説明すると、日本にも餅があるのかとびっくりされました。餅以外にも、正月とは関係ないですが、納豆や野菜の漬物、馴鮨があるなど日本と同じ食品が利用されていて、いわゆる照葉樹林文化論で論じられている日本とつながる文化を感じました。
その他に正月には、村人総出で牛や水牛などを1頭丸ごと解体して調理し、親戚や近隣の村からお客さんを呼んで大宴会をおこないます。酒を飲み、皆で語らい、踊ります。
ただ日本と大きく異なることがあります。村ごとに正月の三が日が違うのです。今日はこの村が正月の宴会、明日は別の村でまた宴会。「よしあの村の正月祝いに行くぞ!」と誘われ、行く先々でお餅と肉料理を食べ、酒を飲んでしまいました。何回酒に酔い潰れてしまったことか。地域全体でみると12月の約1か月間に満遍なく正月が祝われます。調査地域のアカの人達にとっては稲の収穫とサトウキビの収穫の間にわずかにある農閑期の楽しい一時です。