第59号(2008年5月配信)「メルマガ写真館」
「刺繍の練習」... 佐藤若菜(東南アジア地域研究専攻)
針仕事にも、“本番”のための“練習”があります。中国貴州省に住むミャオ族女性にとって、“本番”の一つは、盛装に刺繍をほどこすこと。“練習”のあとが上の写真です。
刺繍は、一度針を刺してしまうと後戻りできません。糸をほごすこともできますが、“本番”では避けたいこと。布に針の穴があいてしまうし、糸が毛羽立ってしまいます。たった数ミリのずれが、刺繍の美しさを損なうのです。
“練習”では、技術の訓練だけでなく、母から教えられた模様に自分なりの変化を加えます。とはいっても、はなびらの形を少し変えてみるとか、鳥の羽を長くしてみるとか、1センチにも及ばない変化です。
でも、その1センチにも及ばない変化について、試行錯誤を繰りかえしている姿が、この布からはひしひしと伝わってくるのです。