臨地教育研究による実践的地域研究者の養成

京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科

第55号(2008年1月配信)「メルマガ写真館」

「母と娘の午後」..........菅野直美(アフリカ地域研究専攻)

「お母さん、大丈夫だってば。平気、平気、その調子で答えたらいいわよ」
娘の明るい口調に励まされたのでしょう。明日の英語の口述試験に不安をいだいていた母は、ほっとして安堵の表情を浮かべました。

彼女の名前はアナ・マリア。HIV陽性者として自己の体験を語る活動家の一人です。
6年前、彼女の体重はわずか29キログラムでした。
「あの当時、私を含めた誰もが、私はそう遠くない将来に死ぬだろうと思っていたわ。でも幸運なことに適切な治療を受けることができて、私は今こうして生きている。HIVに感染したからといって、人生を諦めないでほしいの」

HIV感染率が上昇しているモザンビークにおいて、彼女はHIV陽性者としてありのままに生きていく可能性を開拓し続けています。今年から、英語の学校へ通うことになりました。「勉強は大変だけど、辛くはないの。英語を話せるようになったら、私の経験をもっと多くの人に伝えることができるでしょ?世界中の人に。その次は看護学校へ通うわ。やりたいことだらけで、休んでいる暇なんてないわね」

午後のやわらかい陽射しを受けながら、彼女はにっこりと微笑んだのでした。

 

作成日: 2008年1月23日 | 作成者: 事務局