臨地教育研究による実践的地域研究者の養成

京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科

■■■■■■■■■■■■■■■ October 2008 第64号 ■■■■■
 アジア・アフリカ地域研究情報マガジン
 Integrated Area Studies INFOrmation Magazine(IAS-INFOM)
 http://www.asafas.kyoto-u.ac.jp/miryoku/j/ml.html
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___________今月号の目次_________________

□「異国の成功譚」..............................フィールド便り
□「ロウソクもぐったり」........................メルマガ写真館
□ 大学院教育改革支援プログラム「研究発信トレーニング」募集開始
□ フィールド・ステーションHPの紹介
□ フィールド・ステーションコラム
□ GCOEワーキングペーパ
□ 国際シンポジウム報告
□ セミナー情報
□ 編集子より
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■フィールド便り・19便

「異国の成功譚」
..................下條尚志(東南アジア地域研究専攻)

ベトナムはホーチミン市内の安宿街へ格安の国際電話をかけに
いったときのこと。黒い皮ジャケットとサングラスのオヤジに
突然「おい」と声をかけられた。この辺りの界隈ではしばしば
怪しい男に「キレイナオンナノコイル」と日本語で話しかけら
れるので、またかと思いオヤジの呼びかけを無視した。しかし、
オヤジは懲りずに追いかけてきて自分が日本人であると称し、
「いきつけ」の喫茶店に誘った。「いきつけ」と聴いて洒落た
店を想像したが、プラスチックの椅子と机が2~3セットしか
置いていないどこにでもあるローカルな青空カフェであった。
オヤジはコーヒーをすすりながら威勢よく語り始めた。

「おれはこの辺りを仕切るやくざの親玉と友達だ。」
どうやらオヤジの愛人の一人が、親玉の妹であるそうな。
「先日時計を盗まれたが、親玉に一声かけただけで戻ってきた」
というのがオヤジの言い分である。モノを盗まれたら俺に任せ
ろとオヤジはいたって強気である。

「おれは(五つ星の)ニューワールドホテルの娘の男だ。」
結婚を何度もせがまれたが日本に女房がいるからと断ったそうだ。
令嬢はそれでも諦めきれず、目が回るほどの大金を提示したが
オヤジは勇ましく拒否したとのことである。

オヤジは話し終えたあと「今回だけは特別だ」といって1万ドン
(およそ60~80円)のコーヒー代金を支払ってくれ、その場
を立ち去った。

このオヤジに限らず、ベトナムで出会った日本人のなかには聞い
てもいないのに自分の成功譚を語る人が多かった。つまり自分が
いかに地域社会を知りそのなかに溶け込んでいるのかという調子
である。もちろんその成功譚が「真実」であることもありうる。
が、その多くが耳を疑いたくなるほどよくできた話なのだ。

ここで問題なのは、話の聞き手がベトナムにきたばかりの、相手
の素性をあまりよく知らない「私」であるいうことだ。私は相手
がどれほど語学やベトナム社会に精通しているのかよくわからない。
だからオヤジは無垢な私に対して好きなだけ異国の成功譚を語る
ことができるというわけだ。オヤジのできすぎた話を見破るには、
やはり長期の滞在と地域に関する知恵が肝要なのだろう。

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このメールマガジンのバックナンバーは、こちらのページから
ご覧いただけます。
http://www.asafas.kyoto-u.ac.jp/miryoku/j/mls/list/bn.html

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■メルマガ写真館......フィールドでの写真からはじまるコラム
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「ロウソクもぐったり」
...................片山祐美子(アフリカ地域研究専攻)

朝の調査を終えて昼食にありつこうと家に帰ってくると、部屋の
ロウソクがうなだれていました。なぜこんなことになっているの
か、瞬時にはわかりませんでした。それを見た学校帰り・・・・
http://www.asafas.kyoto-u.ac.jp/miryoku/j/mls/phots/2008_10.html
(写真とエッセイの続きは上記HPでご覧いただけます)

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■大学院教育改革支援プログラム「研究発信トレーニング」募集開始!
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JSPS「大学院教育改革支援プログラム」の採択をうけて新教育
プログラム「研究と実務を架橋するフィールドスクール:社会
に貢献するアジア・アフリカ地域専門家の養成」がいよいよ発
進しました。このプログラムには、(1)フィールドスクール
(フィールド講義とフィールド演習)、(2)院生発案の共同研究、
(3)国際協力のための実務基礎教育、(4)言語を主とする地域研
究教材開発、の4つの柱があります。
JSPSホームページ http://www.jsps.go.jp/j-daigakuin/data/07_sinsa/h20/D006.pdf

現在、3番目の柱の内容としてASAFASの院生を対象とした「研
究発進トレーニング」の参加者募集をしています。
(募集締め切りが11月6日に延長されました)
詳しくは、ASAFAS ホームページhttp://www.asafas.kyoto-u.ac.jp/kaikaku/
にて確認してください(近日中にサイト公開予定です)

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■京都大学 GCOE プログラム:生存基盤持続型の発展を目指す地域研究拠点
大学院教育部会:フィールド・ステーション(FS)HP紹介
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【インドネシアFS】
2003年9月9日に21世紀COEプログラムにより発足した。その後、ASAFAS
院生のみならず世界の研究者にとっても利用できるような東部インドネ
シア情報空間とすることを目的として発展してきた・・・
http://www.humanosphere.cseas.kyoto-u.ac.jp/staticpages/index.php/indonesiaFS

【ラオスFS】
ラオス・フィールド・ステーションは、ラオスを中心とするインドシナ
地域で臨地調査を行う大学院生や研究者を支援する研究拠点です・・・・
http://www.humanosphere.cseas.kyoto-u.ac.jp/staticpages/index.php/laosFS

【南アジアFS】
インド・タミルナードゥ州コインバトール市のタミルナードゥ農業大学の
一角にフィールドステーションはあります。マドゥライ市周辺のため池灌
漑地帯で、ASAFASの院生も加わり・・・・
http://www.humanosphere.cseas.kyoto-u.ac.jp/staticpages/index.php/southasiaFS

【西アジアFS】
イスラーム法の実践と宗教復興の実態を、西アジア諸国の政治・ 経済・
社会との関係の中に有機的に位置づけて調査・研究し、イスラーム学を
ディシプリンの一つとして加えた総合的地域研究の新しい方法と・・・・
http://www.humanosphere.cseas.kyoto-u.ac.jp/staticpages/index.php/westasiaFS

【エチオピアFS】
エチオピア・フィールド・ステーションは、東北アフリカ地域で調査す
る大学院生や研究者を支援する研究拠点です。アジスアベバ大学社会学
部やエチオピア研究所、サウスオモ・リサーチセンターと連携して・・・・
http://www.humanosphere.cseas.kyoto-u.ac.jp/staticpages/index.php/efs

【カメルーンFS】
カメルーン・フィールド・ステーションは、調査の中心である東部州の
ドンゴ村に設置されています。調査拠点としてすでにあったヤシの葉葺
きの家屋を増築・拡充し、太陽光による発電設備や衛星電話・・・・・
http://www.humanosphere.cseas.kyoto-u.ac.jp/staticpages/index.php/cfs

【ナイロビFS】
ナイロビ・フィールド・ステーションは、2003年に設立されました。
電話やインターネット接続、コンピュータと関連機器をそなえ、また、
辞書・事典類や机と椅子、本棚などの設備を整えて・・・・
http://www.humanosphere.cseas.kyoto-u.ac.jp/staticpages/index.php/nfs

【タンザニアFS】
タンザニア・フィールド・ステーションは、ダルエスサラーム郊外の閑静
な住宅街にあり、資料の整理や分析に利用するほか、資料収集の拠点、
機材や資料の保管場所としても活用しています・・・・・
http://www.humanosphere.cseas.kyoto-u.ac.jp/staticpages/index.php/tfs

【南部アフリカFS(ザンビア)】
ザンビア・フィールド・ステーションは、ザンビアの首都ルサカにある
ザンビア大学経済社会研究所と連携を保ち、資料収集や情報交換などを
推進するとともに、現地研究者との交流・討論を深める・・・・・
http://www.humanosphere.cseas.kyoto-u.ac.jp/staticpages/index.php/zfs

【南部アフリカFS(ナミビア)】
ナミビア・フィールド・ステーションは、ナミビアの首都ウイントフッ
クの住宅街の一角にあり、ナミビアやその周辺諸国でフィールドワーク
をすすめる教員と院生の活動拠点となっています・・・・
http://www.humanosphere.cseas.kyoto-u.ac.jp/staticpages/index.php/namibiaFS

◆大学院教育(フィールド・ステーション)のページから
各FSの場所がGoogleマップで閲覧できます。
また、大学院生派遣者報告一覧も掲載されています。
http://www.humanosphere.cseas.kyoto-u.ac.jp/staticpages/index.php/edu_ja

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■フィールド・ステーションコラム
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ナイロビFS:
「ナイロビ・バス事情」..................井上真悠子

ケニアの首都、ナイロビの街で最も一般的な交通手段は、「マタトゥ」
と呼ばれる乗り合いバスである。屋根とベンチの付いたバス停が建て
られているところもある・・・
http://www.humanosphere.cseas.kyoto-u.ac.jp/article.php?story=20080609010855281

ナイロビFS:
「北ケニア牧畜民・アリアールが経験した2007年総選挙」
..................内藤直樹

2007年12月におこなわれたケニアの総選挙は、現職大統領に対する
「不正疑惑」を契機としてケニア国内に大きな混乱をまねいた。
この混乱にともなって、ケニア西部地域やコースト・・・
http://www.humanosphere.cseas.kyoto-u.ac.jp/article.php?story=20081008021020115

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■GCOEワーキングペーパ
http://www.humanosphere.cseas.kyoto-u.ac.jp/staticpages/index.php/working_papers
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G-COE Series 6(October 2008)
"Pagodas and Wedding Vows:
Buddhist and Sectarian Practices in Karen State"
..................速水洋子
http://www.humanosphere.cseas.kyoto-u.ac.jp/article.php?story=workingpaper6

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■国際シンポジウム報告
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Sulawesi Area Studies in 50 Years: In Search of
Its Identity and Local Systems"
http://www.humanosphere.cseas.kyoto-u.ac.jp/en/article.php/2008101011

報告者のテーマは多様性に富んでおり、地域住民による自然資源管理、
沿岸海域における環境変動にともなう人間活動の動態、経済変容にと
もなう地域住民の生存基盤確保の動態・・・・
http://www.humanosphere.cseas.kyoto-u.ac.jp/images/library/Image/pdf/20081011_report_j.pdf

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■セミナー情報 11月のおもな地域研究関連研究会情報
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[2008-11-26]生存圏研究所 第86回定例オープンセミナー
http://www.humanosphere.cseas.kyoto-u.ac.jp/article.php/20081126

[2008-11-25]
Forest Policies for a Sustainable Humanosphere
http://www.humanosphere.cseas.kyoto-u.ac.jp/en/article.php/2008070215182026

[2008-11-21]
第39回「東南アジアの社会と文化研究会」
http://www.humanosphere.cseas.kyoto-u.ac.jp/article.php/20081121

[2008-11-20]
イニシアティブ1 研究会
http://www.humanosphere.cseas.kyoto-u.ac.jp/article.php/20081120

[2008-11-19]
生存圏研究所 第85回定例オープンセミナー
http://www.humanosphere.cseas.kyoto-u.ac.jp/article.php/20081119

[2008-11-17]
第13回G-COEパラダイム研究会
http://www.humanosphere.cseas.kyoto-u.ac.jp/article.php/20081117

[2008-11-17]
The FORTROP II Conference
http://www.humanosphere.cseas.kyoto-u.ac.jp/en/article.php/20081117-20

[2008-11-15]
アフラシア国際シンポジウム
http://www.humanosphere.cseas.kyoto-u.ac.jp/article.php/20081115

[2008-11-15]
京都大学イスラーム地域研究センター・ユニット2「中道派」研究会
http://www.humanosphere.cseas.kyoto-u.ac.jp/article.php/20081115_is

[2008-11-14]
ケニアにおける民族アイデンティティをめぐる政治と自然保護
http://www.humanosphere.cseas.kyoto-u.ac.jp/article.php/20081029230459146

[2008-11-14]
地域研究方法論研究会
http://www.humanosphere.cseas.kyoto-u.ac.jp/article.php/2008114

[2008-11-14]
イニシアティブ4 研究会
http://www.humanosphere.cseas.kyoto-u.ac.jp/article.php/20081114

[2008-11-12]
第23回 映像なんでも観る会
http://www.humanosphere.cseas.kyoto-u.ac.jp/article.php/20081029142840305

[2008-11-08]
Multiple Paths of Economic Development in Global History
http://www.humanosphere.cseas.kyoto-u.ac.jp/en/article.php/20081108-09

[2008-11-07]
京都人類学研究会11月例会
http://www.humanosphere.cseas.kyoto-u.ac.jp/article.php/20081107

[2008-11-05]
生存圏研究所 第84回定例オープンセミナー
http://www.humanosphere.cseas.kyoto-u.ac.jp/article.php/20081105

[2008-11-04]
G-COE特別パラダイム研究会
http://www.humanosphere.cseas.kyoto-u.ac.jp/article.php/20081104_02

[2008-11-04]
イニシアティブ4 研究会
http://www.humanosphere.cseas.kyoto-u.ac.jp/article.php/20081104

[2008-11-02]
イスラーム地域研究センター(KIAS)ユニット1「国際関係」研究会
http://www.humanosphere.cseas.kyoto-u.ac.jp/article.php/20081102

[2008-11-01]
イニシアティブ1 研究会(中東・イスラーム・サブグループ)「イスラーム的システムの史的展開」
http://www.humanosphere.cseas.kyoto-u.ac.jp/article.php/20081101_02

◆カレンダーからセミナー情報が閲覧できます。
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◆編集子より◆いつも購読いただきありがとうございます。本研究科が採択
をうけたJSPS大学院教育改革支援プログラム「研究と実務を架橋するフィー
ルドスクール:社会に貢献するアジア・アフリカ地域専門家の養成」がいよ
いよ始動しました。これから3年度にわたって実践的地域研究の実質化をさ
らにすすめていきます。皆様のご協力とご理解をよろしくおねがいします。
本メールマガジンもかわらずご愛顧の程よろしくおねがいします(MS)
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◆このメールマガジンは、JSPS大学院教育改革支援プログラム「研究と実務
を架橋するフィールドスクール:社会に貢献するアジア・アフリカ地域専門
家の養成」実行委員会がASAFASフィールドワーク・インターンシップ支援
室より発行しています。

◆感想やご質問をお気軽にお寄せください。掲載希望の記事や
研究会の案内なども受け付けています。
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協力:
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作成日: 2009年1月23日 | 作成者: 事務局
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