■■■ November 2024 第257号 ■■■■■■■■■■■■
アジア・アフリカ地域研究情報マガジン
ASAFAS INFOrmation Magazine
https://www.asafas.kyoto-u.ac.jp/
■■■■■■■■■■■■【発行部数 1,086】■■■■■■■■■
___________今月号の目次 Contents__________
□ フィールド便り............. マレーシアの多文化共生―身近なネポティズム?
□ メルマガ写真館............. 泥炭湿地の歩き方
□ 最近の出来事............... Facebook・X(旧Twitter)情報
□ 編集子より
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■ フィールド便り Letter from the Field
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「マレーシアの多文化共生―身近なネポティズム?」
練言漢(東南アジア地域研究専攻)
マレーシアはクルマ社会です。ここでいうクルマ社会とは二輪車と四輪車をはじめとした自動車が優先される社会であり、歩行者社会と対置される概念と言えましょう。歩道の欠如、横断歩道整備の不十分そして車による移動を前提とした都市空間など、枚挙にいとまがありません。『車両の数はマレーシア人口を超えた』というニュー・ストレーツ・タイムズの新聞記事はマレーシア社会の車への依存を見事に描写しました。京都では自転車のペダルを踏む筆者は、マレーシアに帰るやいなや自動車のそれにごく自然に切り換えました。
朝11時、渋滞でゆっくり進むなか、急に後ろから軽い衝撃が伝わりました。詳細は割愛するが、追突事故に遭ったのである。短い話し合いをへて、付近の警察署に向かうことになりました。追突されたのは初めてではないが、警察署に届け出に行くことは初めてです。極めて軽微な追突事故であったため、面倒だなと思いつつ、警察署で所定の手続きをしました。手続きの途中、警察官が修理業者の電話番号を筆者に渡し、車の修理依頼先を紹介してくれました。面倒事に巻き込まれたとはいえ、親切で気さくな警察官でよかったなと思いました。
昼3時半、すべてが終わって、警察署から出て、車に向かうとき、「坊ちゃん(中国語では「小弟弟」というふうに呼ばれた。世事に疎い若い男性というニュアンスを伝えるために坊ちゃんにした)、事故に遭ったの?修理ならうちにお任せください」と道端に立っている中年男性に声かけられました。警察官に紹介してもらったから大丈夫というふうに答えたら、「○○警察官よね、△△さんのところを紹介したでしょ。あの警察官はいつもあそこを紹介するんだ。でも△△さんはDatoの称号を持つから、坊ちゃんの車を修理する際に何かあったら、泣き寝入りするしかないよ」と「忠告」してきました。Datoをはじめとしたマレーシアの様々な称号は、マレーシア国王や各州のスルタンから社会的功績・貢献のある人に贈られるのです。
忠告の真偽はさておき、なぜあまたある業者の中、Datoと称号を持ち、一定の社会的・経済的地位を持つ中華系の業者△△さんを紹介してきたのかということの興味深さを提起してくれたことに感謝したいと思います。筆者が経験したのはイギリス植民地時代から公務員・官僚におけるマレー人の優位と、私企業、経済領域において影響力を持つ華人という構図から、生み出された連携プレーではないかと思い、軽く感動し筆を執った次第です。
写真 路駐と少し遠くにある市場
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■ メルマガ写真館 Photo Gallery
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「泥炭湿地の歩き方」
岩田薫(東南アジア地域研究専攻)
一歩踏み出すたびに腰まで泥炭湿地林の地面に埋まる私を見て、調査に同伴する村人が「イワタ、どうしてなの?」と笑っていました。一方の私は片足を泥炭にとられたまま、彼らが慣れた様子で足場を見つけ、軽やかに進んでいく様子を眺めます。
豊かな生態系に恵まれたカリマンタン島には、世界最大規模の熱帯泥炭湿地林が広がっています。泥炭はひとたび足を踏み込むと沈んでしまうほど柔らかく、さらに雨季には酸性で赤茶色の水で冠水して足下が見えづらいので、ただ歩くだけでも一苦労です。やっとの思いでキャンプ地にたどり着いた時には、湿地の水と汗とで全身ぐっしょり濡れていました。
湿地から汲んだ水で炊いた、茶色くて酸味のあるご飯を山盛り食べたあとは、翌日の帰路に備えて横になり、目を閉じます。ふと、Bluetoothスピーカーから流れる音楽や、まだ体力のあり余る村人たちの楽しそうな話し声が耳に入ってきました。電波も届かない森の真ん中で、スピーカーから流れる音楽と葉擦れの音がまじりあい、心地よい風に撫でられるうちに、私はいつの間にか眠りに落ちていました。
写真1 熱帯泥炭湿地の様子
写真2 キャンプ地での団欒
写真3 泥炭湿地林の夕焼け
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■ 最近の出来事 Recent Topics
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■ 編集子より From the Editor
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後期が始まり、フィールドから帰ってきた学生に出会うと、どこか以前とは雰囲気が違う。さまざまな事があったであろうフィールドでの経験が、まさに各々の成長につながっているのだなと実感し、そんな学生の姿を頼もしく、そしてなんだか羨ましく思います(R・N)
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