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地域研究情報マガジン

アジア・アフリカ地域研究情報マガジン 第239

■■■ May 2023 第239号 ■■■■■■■■■■■■
アジア・アフリカ地域研究情報マガジン
ASAFAS INFOrmation Magazine
https://www.asafas.kyoto-u.ac.jp/
■■■■■■■■■■■■【発行部数1070】■■■■

__今月号の目次 Contents__________________

□ フィールド便り............. ママックの店先から、港市ペナンに思いを馳せる
□ メルマガ写真館............. 野生の木の実とその利用
□ お知らせ............................ オープンキャンパスの開催
□ 講演会・セミナー情報....... 第259回 アフリカ地域研究会
□ 講演会・セミナー情報....... 第33回日本熱帯生態学会年次大会( JASTE33)サテライトイベント
□ 最近の出来事..................... Facebook・Twitter情報
□ 編集子より
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■ フィールド便り Letter from the Field
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「ママックの店先から、港市ペナンに思いを馳せる」
中島咲寧(東南アジア地域研究専攻)

ペナン島で調査を始めて二ヶ月が経った頃、顔馴染みになったママック・レストラン(タミル系ムスリムの料理店・喫茶店。以下、ママック)の店主から、「お店の仕事を手伝ってみたら」と声を掛けられました。当地域のタミル系ムスリム住民を研究対象とする私は、現地語のマレー語に加え、彼らの母語であるタミル語も勉強していました。それを知った店主が、ここで手伝いをすれば練習が出来るよと提案してくれたのです。慌ただしい都市のフィールドで、いかに人々と親密な関係を築けるのか。模索の日々が続いていた私は誘いを二つ返事で承諾し、週に数回お店に通う日々が始まりました。
働く中で見えてきたのは、ママックがいかに多種混交的な空間かということ。タミル系ムスリムの食文化にルーツを持つ食事は全てハラールで、マレー人・華人・インド人の民族の別を問わずお客が訪れます。また比較的安価で飲食が楽しめ、夜遅くまで開いており、仕事を終えた出稼ぎ労働者の人々が集う憩いの場ともなっています。また店内ではタミル系ムスリムの店主とその子息たちの他に、インド、スリランカ、バングラデシュなどの国々から来た従業員が働いています。この多種混交の空間で人々は、相手に応じ使用言語を切り変えて対話します。例えば店主は、インド出身の従業員やインド系のお客にはタミル語、またマレー人や華人のお客にはマレー語、観光客には英語で会話します。一方バングラデシュ出身の従業員は、現地で習得したマレー語で接客を行いつつ、同郷の出稼ぎ労働者集団を見つけると母語のベンガル語で談笑します。
多様な背景を持つ人々が同じ空間に集い、互いの共通言語を探り合いながら対話する。楽しそうに食事をとるお客たちを眺めながら、ペナンを発祥の地とするママックがその港市的な性格を現代に残していることに気が付き、少しワクワクしました。

写真1:ナシ・カンダー(Nasi Kandar)と呼ばれる、お米に野菜や肉類などの好きなおかずやカレーをご飯の上に盛って食べるご飯。タミル系のムスリムの食文化にそのルーツを持つ。筆者は手伝いをした日、お給料代わりにタダでご飯を食べさせてもらっていた。

写真2:店内の様子。お客が盛ってほしいおかずを指さし、従業員が盛り付ける。それぞれのおかずに値段が決まっており、盛り終わった皿を店主が目で確認して値段を伝える。カレーはスープだけなら無料で、色んな種類のカレーをかけて食べるのが美味しい。紙で包んで持ち帰ることも出来る。

(上記フィールド便りに関する写真は次のFacebookでご覧ください。)
https://www.facebook.com/asian.african.area.studies/posts/pfbid0tEytp7ZJc1ua2NDTrj3QKGfPkVtWYu4nkWyfKeqWNA4rbieQhG86iqqj3VKLV3qel


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■ メルマガ写真館 Photo Gallery
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「野生の木の実とその利用」
石崎楓(東南アジア地域研究専攻)

 ナッツはお好きですか?現代日本の食生活では、アメリカで栽培されたカシグルミやアーモンド、インドや東南アジアで栽培されたカシューナッツなどが消費されています。しかし各地では、日本原産の木の実の利用もまた引き継がれています。今回ご紹介する、カヤの実の利用もそのひとつです。カヤ(Torreya nucifera)は、雌雄異株の常緑高木で本州の宮城以南から四国、九州(屋久島まで)分布する日本固有種です。食用の油にしたり、ナッツとして利用するために、古くから庄屋や問屋の屋敷地やお寺の境内に植えられてきました。
 9月のお彼岸のころ、ナリドシであれば実がどんどん落ちてきます。そのままでは渋くて食べられないのであく抜きが必要です。私の調査地のひとつである三重県いなべ市では、寒の時期に作るカキモチの「具」としての利用が一般的です。しかし、中には、あく抜きをしなくてもおいしく食べられるカヤの木があります。それは地元で「シブナシガヤ」と呼ばれ、桑名藩の支配下にあった江戸時代、山村の年貢の足しにするために松平定綱公が植えたとされます。
 一般に、屋敷地の有用植物は、生活スタイルの変容によって伐採される傾向にあります。しかし、加工・調理方法・食文化も含めたそれらの植物資源は、地域文化を反映した有望な地域資源としても注目されています。実際に、各地でカヤの実の商品化も進んでいます。長い歴史のあるカヤと日本人の関係性の今後の展開が楽しみです。
写真1:天日に干された状態の「シブナシガヤ」の実
写真2:カキモチの具となればカヤの実のほろ苦さも美味しく味わえる
写真3:集落の中心部に受け継がれる雌雄の「シブナシガヤ」

(上記メルマガ写真館に関する写真は次のFacebookでご覧ください。)
https://www.facebook.com/asian.african.area.studies/posts/pfbid0QzGt6hXMPKk5QuvtLiuGc9pm6EF456v7CerDW6F7rcG8iUMd3FsLSbkee7nBeaZ8l
(過去のメルマガ写真館は、次のURLからご覧いただけます。)
https://www.asafas.kyoto-u.ac.jp/photoessay/

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■ お知らせ Announcements
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□ 専攻別 オープンキャンパスの開催
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〇 グローバル地域研究専攻 オープンキャンパス 2023 春
日時:2023年5月27日(土)13:30 - 18:00ごろ

参加申込URL:https://www.asafas.kyoto-u.ac.jp/oc/oc-global2023may/

*対面のみでの開催となります。   
*詳細情報と申込方法は上記の研究科ウェブサイトで公開しています。

〇 東南アジア地域研究専攻 オープンキャンパス2023(Zoom開催)
日時:2023年6月10日(土)13:00-17:00
参加申込URL:https://www.asia.asafas.kyoto-u.ac.jp/news/asiaoc2023/

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■ 講演会・セミナー情報 Lectures, Seminars
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□ 第259回 アフリカ地域研究会
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日時:2023年6月15日(木)15:00-17:00
演者:池邉 智基(東京大学大学院総合文化研究科/日本学術振興会・特別研究員PD)
演題:神のために「働く」ムスリムの民族誌:セネガルにおけるバイファルの組織活動と宗教解釈について
主催:京都大学アフリカ地域研究資料センター、日本アフリカ学会関西支部
https://www.africa.kyoto-u.ac.jp/research/as

*お申し込み
京都大学稲盛財団記念館3階大会議室 + Zoomオンライン
(感染症の状況によってオンラインだけの開催に変更する場合があります。
開催方法は、開催2週間前までに当センターHPにてご案内いたします。
https://www.africa.kyoto-u.ac.jp/)


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□ 第33回日本熱帯生態学会年次大会( JASTE33)サテライトイベント
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第33回日本熱帯生態学会年次大会( JASTE33)の若手委員会企画として、サテライトイベント「“研究と社会をつなぐ”をリアルに!~生態学者がアプリをつくる~」を開催します!

「研究成果をもっと社会に還元したいけど、どうすればいいのか分からない...」そんな悩みを持つあなたに朗報です!「研究と社会をつなぐ」を実現させた体験談を聞いて、あなたの研究を社会に還元する方法について考えてみませんか?
今回の企画では、「いきものコレクションアプリBiome」の開発者、株式会社バイオーム代表取締役の藤木庄五郎さんをゲストにお招きし、どのようにして研究からビジネスの世界へ飛び込んだのか、質疑応答も交えて話して頂けることになりました!
「将来博士課程に進みたいけどその後のキャリアが心配...」そんな方も必見!博士号を生かした新たなキャリア形成の可能性を探しましょう。

開催日:6月25日(日)
時間:11:00~12:00
会場:高知県オーテピアおよびオンライン配信(ZOOM)
https://jastewakateinnovation.weebly.com/jaste3312469124861252112452124882022530011.html
現地参加、オンライン参加を問わず、事前登録は以下のGoogleフォームからお願いします。
​登録された方に後日Zoomアドレスをお送りします。
学会員であるかどうかに関係なく、どなたでも申し込みいただけます。
多くの方のご参加をお待ちしています!!!
https://forms.gle/jUazCtoQSS4gYEfP7

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■ 最近の出来事 Recent Topics
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□ Facebook・Twitter情報
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■ 編集子より From the Editor
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まだ体も暑さに慣れていない時期ですが、今年の5月はとにかく暑い…かと思っていたら、急に冷え込んだりして、なかなか体調管理が難しい。5月号に寄稿された記事を読むと、心は熱帯のあの蒸し暑い空気の中であったり、日本の涼しげな森の中へと、ふっと誘われていく。体調管理や諸々のことも一時忘れ、まだ見ぬ世界の風景を想像して束の間の旅に出かける自分がいたように思います。(R・N)
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編集/発行:
京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科(ASAFAS)広報委員会
ASAFAS キャリア・ディベロップメント室
ASAFAS 次世代型アジア・アフリカ教育研究センター 
    臨地教育・国際連携支援室
協力:
京都大学 アフリカ地域研究資料センター
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