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地域研究情報マガジン

アジア・アフリカ地域研究情報マガジン 第223号

■■■ January 2022 第223号 ■■■■■■■■■■■■
アジア・アフリカ地域研究情報マガジン
ASAFAS INFOrmation Magazine
https://www.asafas.kyoto-u.ac.jp/
■■■■■■■■■■■■【発行部数 974】■■■■■■

__今月号の目次 Contents_______________

□ フィールド便り.................. ツンデレの味「マルカ」
□ メルマガ写真館.................. 宇宙人のような姿で
□ お知らせ............................ オープンキャンパス
..............................フィールド体験教材作品の公開
□ 講演会・セミナー情報....... アフリカ公開講座
□ 最近の出来事..................... Facebook・Twitter情報
□ 編集子より
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■ フィールド便り Letter from the Field
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「ツンデレの味『マルカ』」
田代 啓 (アフリカ地域研究専攻)

 2019年9月に始めたエチオピア・オロミア州アルシ県の一村落でのフィールドワーク。インジェラ (エチオピアの代表的な主食) を楽しみにしていましたが、4日目にして見たことのない料理に出会います。それが「マルカ (malqaa)」でした。
 マルカは、トウモロコシの粉を、水と植物油を加えて火をかけながら練って作ります。そしてボウル皿などに入れ、表面を平らにしたあと、真ん中に作った丸いくぼみに油もしくは牛乳とバルバレ(複数のスパイスのミックス)を注いだら完成。ねっとりしていて、甘さと辛さのバランスが絶妙です。
 調査地域に最初に定住したのは、19世紀後半から20世紀初めに南部から移住したムスリムの牧畜民でした。彼らは牛乳と牛肉、トウモロコシを中心とする食事をしており、マルカも食べていたといいます。その後、北部から移住したエチオピア正教徒の農耕民が、コムギなどの穀物栽培とインジェラを導入しました。つまりマルカは、この土地の歴史を反映する食べ物なのです。
 エチオピア正教徒である調査村落の住民たちと、近隣の村に暮らすムスリムの住民との会話は、頻繁には見られません。たまにお喋りしていると思えば、「お前ら (ムスリム) は早くマルカを食べに家に帰れ!」と冷やかす様子がしばしば見られ、「仲が悪いのか…?」と内心ひやひやしたものです。
 しかし、からかっていた割に、調査村落の人びとはみなマルカが大好きで、いつも夢中になってペロっとたいらげます。調理の手軽さもあるとは思いますが、冷やかしに使われつつも愛される、大切な家庭の味なのです。
 ふざけることや冗談が好きなオロモの人たち。そのふるまいが、宗教の違いという近年特にデリケートになっている壁の、彼らなりの乗り越え方なのかもしれません。そして、それを可能にする絶好の媒体となるのが「マルカ」。散々バカにしたあといざ家に帰ると、マルカをおいしそうに食べる彼らの姿に、愛おしさをおぼえずにはいられません。

写真1:マルカ。この写真では真ん中のくぼみに牛乳とバルバレを
混ぜたものを注いでいますが、断食(動物性食品を食べな
い)期間などは牛乳ではなく食用油が用いられます。
写真2:エチオピア正教徒の村人たちと近隣村落のムスリムの住民
たちが共同して土壌保全活動などを行うこともあります。
別々で作業することが多いですが、終了すると文中のよう
な軽口をたたいてから解散する様子がよく見られました。

(上記フィールド便りに関する写真は次のFacebookでご覧ください。)
https://www.facebook.com/asian.african.area.studies/posts/4885468734832773

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■ メルマガ写真館 Photo Gallery
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「宇宙人のような姿で」
生駒 さや(アフリカ地域研究専攻)

 季節は10月下旬~11月中旬の秋。私は、北海道の森のなかで植生の調査を行っていました。調査地は、道央北部沼田町の自伐型林業家が所有する、様々な樹々で構成された混交林です。自伐型林業は、小規模で環境に配慮した林業形態として、近年注目を浴びています。
 私の調査装備は、頭にヘルメット、全身に綿の入ったモコモコのつなぎ服、スパイク付きの長靴、それにリュックという、まるで宇宙人のような格好です。林床は私の身長と同じくらいの、高さ1.5mにもなるササで覆われているため、森のなかを進むのは容易ではありません。腰につけたクマ鈴をリンリン鳴らしながら、なんとかササをかき分け、木一本一本の樹高の測定や、樹種の特定を行います。
 気温一桁なのに、汗をかくほどヘトヘトになる森での調査ですが、ふと周りを見渡すと、エゾリスが冬支度をしていたり、黄葉したカラマツの小さな葉が、雪のようにサラサラと落ちていたり、艶やかな白い樹皮のシラカバが遠くに見えたりと、とても癒されます。この先何十年、何百年、このような美しく、生物多様性の高い森が続いてくれればなと思いながら私は調査をしました。

写真1:カラマツと青空
写真2:宇宙人のような格好の筆者(右)と自伐型林業家のご夫婦

(上記メルマガ写真館に関する写真は次のFacebookでご覧ください。)
https://www.facebook.com/asian.african.area.studies/posts/4885474518165528

(過去のメルマガ写真館は、次のURLからご覧いただけます。)
https://www.asafas.kyoto-u.ac.jp/photoessay/


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■ お知らせ Announcements
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□ 専攻別 2022年度 オープンキャンパスの開催
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◆ アフリカ地域研究専攻 第1回オープンキャンパス2022
日時:2022年3月26日(土)14:00-16:30

*オンライン会議システムZoomでの開催となります。
*詳細情報と申込方法は後日研究科ウェブサイトでお知らせします。


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□ 東南アジア地域研究専攻・フィールド体験教材作品の公開
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東南アジア地域研究専攻は、地域の方々のご協力を得て、ヴァーチャルリアリティ(VR)やドローンを使って、フィールドを体験できる教材作品を開発し、YouTubeで公開しています。このたび、あらたな2作品が公開されましたので、紹介いたします!

どちらの作品も、VRゴーグルがあれば、まさに自分がフィールドの中にいるかのような体験をすることができます。ゴーグルが無くても、パソコンやスマホの画面を動かせば、全方位の映像を、自由に観ることができます。京都大学ASEAN拠点によるKyoto-ASEAN Virtual Fields事業の一環として制作されました。コロナ禍でなかなかフィールドに行くことができませんが、このVRを使ってフィールドを体験してみてください。


宇治田原茶物語2 「新茶を育む自然環境」
https://youtu.be/ih2Tj-upQZY

VRで観る有明海の漁と自然
https://youtu.be/SRU2JrBZ-W4


これらを含むすべてのVR作品は、以下のYouTubeチャンネルで、どなたでもご覧いただけます。

https://www.youtube.com/channel/UC6LUNI7YJAy_4EMz4eprasg

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■ 講演会・セミナー情報 Lectures, Seminars
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□ 京都大学アフリカ地域研究資料センター主催
2021年度 アフリカ公開講座
「工学研究者、アフリカへ行く!“MNGDプロジェクト”の挑戦」
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 アフリカでは、古来より人やもの、情報のやりとりを様々に発達させてきました。そのなかでも、物理的な往来を容易くする「道」の存在は欠かせません。航空機や高速道路による長距離移動やSNSなどの情報通信が多用されるアフリカで、ともすれば村と村をつなぐふつうの「道」の重要性は看過されてきました。今回のアフリカセンター公開講座では、この「道」に注目して2019年からエチオピアで共同研究をはじめた工学研究者たちの挑戦をとりあげます。
 SATREPS(地球規模課題対応国際科学技術協力プログラム)「特殊土地盤上道路災害低減に向けた植物由来の土質改良材の開発と運用モデル」、通称MNGDプロジェクトの活動について紹介しながら、みなさんと一緒にアフリカの道について考えてみたいと思います。


◆第1回 2021年10月16日(土)15:00-17:00(開場14:30)
講師:木村 亮 「アフリカに大学を造る」(*終了しました)

◆第2回 2021年11月27日(土)15:00-1700(開場14:30)
講師:安原英明 「アフリカで地盤環境工学を考える」(*終了しました)

◆第3回 2021年12月18日(土)15:00-17:00(開場14:30)
 講師:福林良典 「アフリカで住民と道普請する」(*終了しました)

◆第4回 2022年 1月22日(土)15:00-17:00(開場14:30)
 講師:亀井一郎 「アフリカの土壌を改質する」(*終了しました)

◆第5回 2022年 2月19日(土)15:00-17:00(開場14:30)
 講師:澤村康生 「在来植物でアフリカの道を直す 」

*この公開講座は、京都大学アジア・アフリカ地域研究研究科の「令和3年度 アジア・アフリカ地域研究履修証明プログラム」の一部として提供しています。

* 各日ともに、オンライン(Zoom)、および、
京都大学稲盛財団記念館3階 大会議室での、ハイブリッド形式 でおこないます。

*お申し込み
「お名前(ふりがな)、ご住所、メールアドレスなどの連絡先、受講希望講座」を記して、下記のいずれかへお送り下さい。会場での受講を希望される場合は、その旨お書き添えください。無記入の場合は、オンライン受講希望として扱わせていただきます。

1) E-mail:manabiafrica[at]gmail.com
([at]は@に変更してください)

2) 郵便:〒606-8501 京都市左京区吉田下阿達町46
京都大学アフリカ地域研究資料センター 公開講座係

3) FAX: 075-753-7831

各回、開講日の前週金曜までにお申し込みください。お申し込み後、5日以内に受講受付と受講料振込のご案内を返信いたします。入金確認後、当日までに会場での受講案内、あるいは参加URLをお送りします。講座の映像は、開講日以降もオンラインで見ていただけるよう、アーカイブを公開します(期間限定)。

*詳細
https://www.africa.kyoto-u.ac.jp/archives/9731

*共催
京都大学アフリカ地域研究資料センター、SATREPS「特殊土地盤上道路災害低減に向けた植物由来の土質改良材の開発と運用モデル」プロジェクト共同主催


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■ 最近の出来事 Recent Topics
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□ Facebook・Twitter情報
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■ 編集子より From the Editor
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 エチオピアの村落で、たまに聞かれる冷やかしの声と、それを愛あるものと感じさせるマルカの絶妙な塩梅。北海道の森の奥。ササ、カラマツ、シラカバ、それに著者らが、サラサラ、リンリン、モコモコ、ヘトヘト…シンと張りつめた空気のなかで、相互に忙しなく音を鳴らして活動している情景。これらは、その場に静かにとどまらなければ、見つけることがなかったものかもしれません。
 ASAFASでは、いま博士予備論文・博士論文の公聴会シーズンを迎えています。フィールドで出会う、生きた音、声や味などは、ひとたび「論文」や「パワポ」に流し込もうとすれば、なかなかうまく描写されません。それでも、私たちを捉えて離さないそうした確かな断片を、なんとかカタチにできはしないかと、若さに負けじ!と、ともに頭をひねってみる明け方でした。(Y.K.)


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□ メールマガジンに対するご意見・ご感想お待ちしております。
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編集/発行:
京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科(ASAFAS)広報委員会
ASAFAS キャリア・ディベロップメント室
ASAFAS 次世代型アジア・アフリカ教育研究センター
    臨地教育・国際連携支援室
協力:
京都大学 アフリカ地域研究資料センター
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