■■■ December 2021 第222号 ■■■■■■■■■■■■
アジア・アフリカ地域研究情報マガジン
ASAFAS INFOrmation Magazine
https://www.asafas.kyoto-u.ac.jp/
■■■■■■■■■■■■【発行部数970】■■■■
__今月号の目次 Contents__________________
□ フィールド便り............. グルン族の人々が住む村で
□ メルマガ写真館............. 詩を紡ぐ、詩が紡ぐ
□ お知らせ................... 入試日程
□ 講演会・セミナー情報....... アフリカ公開講座、アフリカ地域研究会
□ 最近の出来事............... Facebook・Twitter情報
□ 編集子より
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■ フィールド便り Letter from the Field
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「グルン族の人々が住む村で」
内藤早百合(グローバル地域研究専攻)
私がグルン族の存在を知ったのは、インターンシップ兼調査のためにネパールに渡って間もない頃、カトマンズのホームステイ先でみんなで団欒をしていた時でした。「サユリの顔ってネパール人みたい。」口を揃えてそう言うネパール人のホストブラザー達は目がぱっちりしていて、彫りが深く、一重で全体的に平らないわゆる「THE日本人顔」の私とはある意味正反対の顔。首を傾げる私に彼らは、ネパールにはインド人に似たパルバテ・ヒンドゥーと東アジア人に似たチベット系の民族がいることを教えてくれました。「チベット系の民族の中でも、サユリは特にグルン族に似てる。」グルン族?どんな人たちなんだろう…そしてある時、インターンシップの上司から、「来週からグルン族の村に調査に行ってもらうよ」と告げられました。
グルン族に会える…!ワクワクしながら、カトマンズからバスに乗り込み7−8時間揺られてポカラに着くと、次は待ち構えていたジープに乗り4時間ほど休憩を挟みながら西に走りました。着いたのはパンチャセ山(標高2500m程)の麓。そこから山を登り、山頂で一泊して山の反対側にあるグルン族の村にやっとのことでたどり着きました。村に入って真っ先に目に入ったのは、精巧に積み上げられた平たい石が白色と赤茶色に塗られた家々、そしてグルンの女性たちが纏う服の色鮮やかさでした。初めて耳にする早口のグルン語で、恥ずかしそうに、でも興味津々に話しかけてくる人々は皆、日本で普通に歩いていそうな顔つきの人ばかり。
その村に滞在したのは2週間程でしたが、ネパールの滞在の中で最も忘れがたい時間になりました。満点の星空、朝日が照らすヒマラヤ山脈、ゆっくりと流れる時間、そして何よりもお酒とダンスが大好きな温かいグルンの人々。調査を終えてカトマンズに帰る前、12歳の男の子が可愛らしい小ヤギを連れて走ってきて、「次サユリが帰ってくる頃にはこの子ヤギも食べ頃になってると思うから、村のみんなで食べようね。」と笑顔で送り出してくれました。それからはや数年、パンデミックのこともあり、未だ村には行けていません。
果たしてあのヤギは今も私を待っているのでしょうか、それとも…?
写真1:グルン族の家々とこれから薪を集めに行く姉妹。屋根についている白い箱はミツバチの養蜂箱で、採れた蜂蜜を市場で売って副収入を得ているそうです。
写真2:ポカラからパンチャセ山の麓まで乗せてもらったジープ。車のルーフに乗っている長い植物はUkhu(サトウキビ)。外皮を剥きそのままかじると素朴な甘い味がして、糖分補給にはぴったりです。
写真3:グルン族の女性達と。私(右から3人目)が着ている赤い巻きスカートlungiはグルンのお母さんがプレゼントしてくれました。
(上記フィールド便りに関する写真は次のFacebookでご覧ください。)
https://www.facebook.com/asian.african.area.studies/posts/4749347081778273
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■ メルマガ写真館 Photo Gallery
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「詩を紡ぐ、詩が紡ぐ」
北嶋 泰周(グローバル地域研究専攻)
私が調査している大阪市西成区では、あいりん地区の住民(通称:おっちゃん)を対象とした句会が頻繁に行われています。ここで詠まれた詩や俳句の幾つかは、西成警察署より1975年から発行されている『あいりん労働者の詩集』に掲載されてきました。1961年から幾度となく勃発してきた「釜ヶ崎暴動」とは異なる、警察当局と(元)労働者の暖かな繋がりが垣間見えます。現在では労働者以外の投稿も可能となっており、私もその中の一つである「ひと花センター(ひと花句会)」の10月句会と11月句会に参加してきました。
私のお気に入りは「11月の季語」をテーマに10月句会で詠まれた「かまがさき 勤労感謝 皆お酒」です。詠み手のおっちゃんは、中学校を卒業した55年前からあいりん労働者として生活を始め、現在は単身高齢で生活保護を受けている方です。おっちゃんは「毎日が勤労感謝やけどな!」と補足し、参加者がワハハと笑う光景は印象的でした。
11月句会には、「ひと花センター」として改築される前の保育園で55年前に保育実習を経験した女性の方も参加されていました。その女性は、奈良少年刑務所で詠まれた詩をカレンダーにして熊本などの被災地へ寄贈する活動や、『あいりん労働者の詩集』が紹介された報道番組を偶然見たことがきっかけで「ひと花句会」に興味を持ったと語ります。
あいりん地区は「怖い」あるいは「危険だ」というイメージを持たれがちです。しかし一方で、詩や俳句を通して様々な人が共有していく感性、さらに詩集による予期せぬ他者の取り込み、そして無限大に広がっていく人間の繋がりを見ることもできました。
人が詩を紡ぎ、また詩が人を紡ぐ。私自身も次第にあいりん世界へ紡がれていくようでした。
写真1:自分の詠んだ句を紹介する「ひと花センター」利用者の方々。
写真2:「ひと花センター」の入り口。建物には保育園の面影が残っています。
写真3:『あいりん労働者の詩集』第41号の冊子。
(上記メルマガ写真館に関する写真は次のFacebookでご覧ください。)
https://www.facebook.com/asian.african.area.studies/posts/4749361535110161
(過去のメルマガ写真館は、次のURLからご覧いただけます。)
https://www.asafas.kyoto-u.ac.jp/photoessay/
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■ お知らせ Announcements
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□ 2022年度 大学院アジア・アフリカ地域研究研究科 入試日程
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◆ 第2回入学試験
(*東南アジア地域研究専攻・アフリカ地域研究専攻のみ)
出願期間:令和4年1月7日(金)~1月18日(火)17時必着
試験日程:令和4年2月8日(火)、9日(水)
◆ 博士課程[5年一貫制]第3年次編入学試験
出願期間:令和3年12月15日(水)~12月22日(水)17時必着
試験日程:令和4年1月12日(水)
https://www.asafas.kyoto-u.ac.jp/admissions/transfer/
*募集要項等の詳細は下記研究科ウェブサイトで公開しています。
https://www.asafas.kyoto-u.ac.jp/admissions/application/
*なお、本研究科東南アジア地域研究専攻の博士課程[5年一貫制]
入学試験について、令和5年度入学試験(令和4年度実施)からは、
9月の第1回試験のみとし、2月の第2回試験は実施しない予定です。
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■ 講演会・セミナー情報 Lectures, Seminars
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□ 京都大学アフリカ地域研究資料センター主催
2021年度 アフリカ公開講座
「工学研究者、アフリカへ行く!“MNGDプロジェクト”の挑戦」
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アフリカでは、古来より人やもの、情報のやりとりを様々に発達させてきました。そのなかでも、物理的な往来を容易くする「道」の存在は欠かせません。航空機や高速道路による長距離移動やSNSなどの情報通信が多用されるアフリカで、ともすれば村と村をつなぐふつうの「道」の重要性は看過されてきました。今回のアフリカセンター公開講座では、この「道」に注目して2019年からエチオピアで共同研究をはじめた工学研究者たちの挑戦をとりあげます。
SATREPS(地球規模課題対応国際科学技術協力プログラム)「特殊土地盤上道路災害低減に向けた植物由来の土質改良材の開発と運用モデル」、通称MNGDプロジェクトの活動について紹介しながら、みなさんと一緒にアフリカの道について考えてみたいと思います。
◆第1回 2021年10月16日(土)15:00-17:00(開場14:30)
講師:木村 亮「アフリカに大学を造る」(*終了しました)
◆第2回 2021年11月27日(土)15:00-1700(開場14:30)
講師:安原英明 「アフリカで地盤環境工学を考える」(*終了しました)
◆第3回 2021年12月18日(土)15:00-17:00(開場14:30)
講師:福林良典 「アフリカで住民と道普請する」(*終了しました)
◆第4回 2022年 1月22日(土)15:00-17:00(開場14:30)
講師:亀井一郎 「アフリカの土壌を改質する」
◆第5回 2022年 2月19日(土)15:00-17:00(開場14:30)
講師:澤村康生 「在来植物でアフリカの道を直す 」
*この公開講座は、京都大学アジア・アフリカ地域研究研究科の
「令和3年度 アジア・アフリカ地域研究履修証明プログラム」の
一部として提供しています。
* 各日ともに、オンライン(Zoom)、および、
京都大学稲盛財団記念館3階 大会議室での、ハイブリッド形式
でおこないます。
*お申し込み
「お名前(ふりがな)、ご住所、メールアドレスなどの連絡先、受講希望講座」を記して、下記のいずれかへお送り下さい。会場での受講を希望される場合は、その旨お書き添えください。無記入の場合は、オンライン受講希望として扱わせていただきます。
1) E-mail:manabiafrica[at]gmail.com
([at]は@に変更してください)
2) 郵便:〒606-8501 京都市左京区吉田下阿達町46
京都大学アフリカ地域研究資料センター 公開講座係
3) FAX: 075-753-7831
各回、開講日の前週金曜までにお申し込みください。
お申し込み後、5日以内に受講受付と受講料振込のご案内を返信いたします。入金確認後、当日までに会場での受講案内、あるいは参加URLをお送りします。講座の映像は、開講日以降もオンラインで見ていただけるよう、アーカイブを公開します(期間限定)。
*詳細
https://www.africa.kyoto-u.ac.jp/archives/9731
*共催
京都大学アフリカ地域研究資料センター、
SATREPS「特殊土地盤上道路災害低減に向けた植物由来の土質改良材の開発と運用モデル」プロジェクト共同主催
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■ 最近の出来事 Recent Topics
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□ Facebook・Twitter情報
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■ 編集子より From the Editor
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真冬到来。京都は雪もちらつく季節となりました。この時期毎回楽しみにしているのが、大根焚と終い弘法に終い天神です。ところが、コロナ禍で大根焚は軒並み中止となるお寺さんが多く、代わりに煮る前の大根を配るところもあったそう。梵字の文字が刻印された大根は、それはそれでご利益がありそうですが、やはりホカホカに炊かれた大根を、寒空の下お寺の境内で頬張りたかったなと思ってしまいます。今年は、何かとコロナ禍に翻弄された一年となりました。来年はどのような一年となるのか、見通しはそう甘くはなさそうですが、じっくり炊いた大根などを食べて身体を温め、風邪やコロナもろとも吹き飛ばし、皆さまお元気で良いお年をお迎え下さい。(M.S.)
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編集/発行:
京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科(ASAFAS)広報委員会
ASAFAS キャリア・ディベロップメント室
ASAFAS 次世代型アジア・アフリカ教育研究センター
臨地教育・国際連携支援室
協力:
京都大学 アフリカ地域研究資料センター
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