■■ August 2019 第194号 ■■■■■■■■
アジア・アフリカ地域研究情報マガジン
ASAFAS INFOrmation Magazine
https://www.asafas.kyoto-u.ac.jp/
■■■■■■■■■【発行部数 1239】■■
__今月号の目次 Contents_______
□フィールド便り.... バゴー山地の絶景
□メルマガ写真館..........ジプニードライバーの集会
□お知らせ..........................入試日程、履修プログラム
□講演会・セミナー情報....アフリカ地域研究会など
□最近の出来事........ Facebook・Twitter情報
□編集子より
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■ フィールド便り Letter from the Field
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「 バゴー山地の絶景 」
小林 美月(東南アジア地域研究専攻)
真っ暗闇の中にいると、自分が溶けてなくなりそうになる……。
ミャンマーの密林地帯、バゴー山地で過ごす初めての夜は、とても怖くて寂しいものでした。
「明日もうまくいかないんだろうな、村に行くのが怖い」。私は調査地であるカレン人の村で歓迎されていない雰囲気を感じていました。「ゴハン、タベタ?」「ワタシ、ニホンジン!」覚えたてのカレン語フレーズを大きな声で繰り返す私が、村の人たちの目にとても奇妙な生き物に写ったのも仕方ありません。「スパイか?俺の家には来るな」。老人の言葉を思い出すと、なかなか寝付くことができませんでした。初めてのインタビューの時、調査の趣旨がうまく説明できないまま、畑の面積や作物の植え方などについて根掘り葉掘り聞いてしまい、怪しい目でみられるようになっていたのです。夜中、深呼吸をしようと、宿舎の窓を手探りで探し、ゆっくりと開けました。目に飛び込んできたのは満天の星空。怖かった暗闇が急に優しい夜に感じられました。その自然の雄大さは「自分の悩みなんて大したことない。大丈夫」と思わせてくれるには十分でした。
「肌の隣にいる人を大切にすることから始めてみよう」。言葉もままならず、突然押しかけてきた外国人をどうしたら信頼してもらえるか、私がたどりついた答えはそれほど難しくはありません。思いやりと笑顔は世界共通言語。目の前にいる相手の気持ちを考えました。例えば村の女の子たちは、日曜の礼拝に行くとき、編んだ髪の毛にきれいな花で飾り付けをしたり、カレンの伝統衣装を着たりしておしゃれをします。特別な日にいつもよりちょっとかわいくなりたい女の子の気持ちはみんな一緒。「日本の女子はこうやってメイクするんだよ!」村の女の子たちを集めて、日本のコスメでメイクやネイルをしてあげました。きゃっきゃっとはしゃぐ声が私の周りで踊ります。また、インタビューに答えてくれた村人一人ひとりと写真を撮り、街に行っては印刷をしてプレゼントすると、大切そうに飾ってくれた人もいました。私のこと、日本のことも知ってほしいという気持ちで日本語で「ありがとう」と繰り返しました。数か月の滞在中、1〜3週間の訪問を繰り返すという形で調査をしていたのですが、こうして回数を重ねるごとに村の人と私の間の壁が少しずつ薄くなっていきました。
最後の調査を終え、村を去るとき、「アリガト」と小さな声が聞こえました。村長のはにかんだ顔がありました。最初は全く目を合わせてくれなかった村長は、私をカレンの名前「ノーワーワーポー(純白の花の意)」と呼ぶようになっていました。「アリガト」。今度は、はしゃぎながら口紅の塗りあいっこをした6歳の少女の声。口紅を塗りすぎて、真っ赤になった口でにこっと笑いました。よく一緒に手を繋いで森の中を歩き回った男の子はいつも通り鼻水を垂らしながら「イチ、ニ、サン」と言って、ヘヘッと笑いました。「ありがとう」と返す私の声は思わず嬉しさで震えていました。最初に訪問した時は目が合うことさえなかった人たちが、嬉しそうに日本語を口にする様子を見て、自分が少し村の中に溶け込めた気がしたのです。
地域研究をしていると、周りの人からは「度胸があるね」とよくいわれます。でも、私自身はものすごく小心者です。世界の果ての小さな村に飛び込んでいくのはとても勇気がいることで、実は毎回怖気づいています。そういう時、私は暗闇の中で手探りで開けたあの窓を思い出します。「出会いは、絶景」とはだれか偉い人の言葉ですが、あの夜、無数に瞬く星たちが、怖がってばかりだった私の心を温め、そっと背中を押してくれました。更にその先で私が見たのは、村の人たちの笑顔という、星空以上の絶景でした。地域研究をしていると、思いがけない絶景に出会うチャンスがたくさんある気がします。
(上記のフィールド便りに関する写真は次のFacebookでご覧ください)
https://www.facebook.com/asian.african.area.studies/posts/2501452916567712
写真の説明
写真1 果物を見つけると木に駆け寄って、裸足でするすると木に登って いく子供たち。 彼らにはたくさんの「森の味」を教えてもらいました。
写真2 焼畑で作ったモチゴメでお菓子作りをする少女。村を訪ねると、私が大好きなお菓子を作ってくれるようになりました。
写真3 私が大好物のお菓子。甘くて優しい味がします。
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■ メルマガ写真館 Photo Gallery
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「ジプニードライバーの集会」
西尾 善太(東南アジア地域研究専攻)
庶民の足として戦後から現在まで走り続けている小型路線バス(ジプニー)。現在、マニラ首都圏ではジプニーの廃止計画が進められ、・・・
(続きと写真は次のURLをご覧ください)
第159回 「メルマガ写真館」
(上記の写真館については次のFacebookでもご覧いただけます)
https://www.facebook.com/asian.african.area.studies/photos/a.1725324317513913/2501458833233787
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■ お知らせ Announcements
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□ 2020年度 大学院アジア・アフリカ地域研究研究科 入試日程
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*募集要項等の詳細は下記の研究科ウェブサイトで公開しています。
◆ 第1回入学試験
出願期間:2019年8月19日(月)〜8月28日(水)17時必着
試験日程:2019年9月11日(水)、12日(木)
https://www.asafas.kyoto-u.ac.jp/admissions/application
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□ 令和元年度 アジア・アフリカ地域研究履修証明プログラムの開催
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*詳細情報と申込方法は下記の研究科ウェブサイトで公開しています。
出願期間:〜2019年8月29日(木)17時必着
日程:2019年10月〜2020年2月(週末土・日)
履修証明プログラム
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■ 講演会・セミナー情報 Lectures, Seminars
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□ 第245回 アフリカ地域研究会
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日時:2019年10月17日(木)15:00-17:30(映画上映を含む)
場所:京都大学 稲盛財団記念館3階 中会議室
演者:米川 正子(筑波学院大学経営情報学部・准教授、
「コンゴの性暴力と紛争を考える会」代表)
演題:世界最悪の紛争・コンゴと「性的テロリズム」の実態
https://www.africa.kyoto-u.ac.jp/as/as245/
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□ 京都大学アフリカ地域研究資料センター、
アフリカ学際研究拠点推進ユニット共同主催
公開講座「アフリカから学ぶこと:いま私たちにできること」
(要事前申込・受講料 1講座1000円,5講座4000円)
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京都大学では2017年にアフリカ学際研究拠点推進ユニット(アフリカユニット)を立ち上げ、分野を超えてアフリカに関わる研究をつなぐ取
り組みをおこなっています。今回のシリーズでは、アフリカユニットから、さまざまな分野でアフリカ研究を展開している5人の専門家に最新
の話題を提供してもらいます。アフリカを学ぶ私たちにとって、いま何ができるのか、みなさんと一緒に考えてみたいと思います。
◆ 第1回 2019年10月26日(土)
「アフリカをつくる:ものづくりの営み」
高橋 基樹(京都大学アフリカ地域研究資料センター・教授、副センター長)
◆ 第2回 2019年11月30日(土)
「アフリカを繋ぐ:住民との道直しから」
木村 亮(京都大学大学院工学研究科・教授)
◆ 第3回 2019年12月21日(土)
「アフリカを癒す:健康とは何か」
新福 洋子(京都大学大学院医学研究科・准教授)
◆ 第4回 2020年1月18日(土)
「アフリカを食べる:グラスカッターの家畜化」
村山 美穂(京都大学野生動物研究センター・教授)
◆ 第5回 2020年2月15日(土)
「アフリカを歩く:山・砂漠の自然と人と」
水野 一晴(京都大学大学院文学研究科・教授)
いずれの回も、
時間:15:00〜17:00(開場 14:30)
場所:京都大学稲盛財団記念館3階大会議室
定員:80名
*申込・詳細
https://www.africa.kyoto-u.ac.jp/series/koza2019/
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■ 最近の出来事 Recent Topics
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□ Facebook・Twitter情報
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■ 編集子より From the Editor
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世界は予測不可能な不確定性に満ちています。人生もそうです。今月は教員も学生もフィールド調査に出かけている方が多いと思いま
す。普段は意識することが少ないのですが、調査に出られるということは、本人だけでなく、その周囲の環境がひとまず平和で、本人
の行動を許してくれているからです。努力努力、頑張ろう頑張ろうと自分の目標を進めることに集中するだけでなく、自分が生かされ
ている環境に感謝するひとときも時に必要かも知れません。今日は朝から雨で予定していた調査ができそうにありません。雨に煙る椰
子の木をみながら、ふと考えました。皆さんが無事に調査から帰り、京都で再会出来ますように(S.K.)
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◆ このメールマガジンは、京都大学大学院アジア・アフリカ地域
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編集/発行:
京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科(ASAFAS)広報委員会
ASAFASキャリア・ディベロップメント室
ASAFAS次世代型アジア・アフリカ教育研究センター 臨地教育・国際連携支援室
協力:
京都大学 アフリカ地域研究資料センター
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