京都大学ヒマラヤ研究ユニット
ユニット長
藤倉 達郎(アジア・アフリカ地域研究研究科・教授)
関連部局名
アジア・アフリカ地域研究研究科、東南アジア地域研究研究所、
法学研究科、理学研究科、農学研究科、工学研究科、地球環境学堂、
防災研究所、総合博物館、野生動物研究センター、人と社会の未来研究院
活動概要
京都大学は「探検大学」と呼ばれるほど、世界各地で初登頂や初調査をおこなってきた。とくにヒマラヤ地域での学術登山活動は他に類例がない。
1953年には、中尾佐助・川喜田二郎が中部ネパールで学術調査を行い、その成果が1955年から57年にかけてネパール三部作として生物誌研究会から刊行された。1955年の木原均・今西錦司らによるカラコルム踏査では、コムギの祖先種の発見があり、カラコルム4大氷河のトラバースという偉業を成し遂げた。翌1956年には京大学士山岳会AACKが計画し日本山岳会に委譲したマナスル登山隊が、マナスル(8156m)の初登頂に成功し、京大工学部の卒業生である今西壽雄が栄えある初登頂者になった。続く1958年には、①今西錦司と伊谷純一郎のアフリカ初踏査、②西堀栄三郎の南極初越冬、③桑原武夫のチョゴリザ初登頂という3つの大事業が成功した。その一方で、梅棹忠夫の文明の生態史観につながる東南アジア調査、川喜田二郎の西北ネパール、中尾佐助のブータンという若手研究者の個人調査が行われた。こうした一連の研究により、木原(遺伝学)、今西(霊長類学)、桑原(フランス文学)、梅棹(民族学)は、いずれも後年に文化勲章を受章している。こうした野外研究の「京都学派」と呼べる学問の系譜があって、理工医農だけでなく教育などの研究科での研究をはじめ、東南アジア地域研究研究所、アジア・アフリカ地域研究研究科、野生動物研究センターといった他大学にはないユニークな教育研究組織が誕生している。
さらに1985年のブータン・マサコン峰初登頂(堀了平医学部教授)、チベット・ナムナニ峰初登頂を経て、1989年に京都大学ヒマラヤ研究会ASHが組織された。1989-1990年には、ムズターグアタ峰とシシャパンマ峰(戸部隆吉医学部教授・病院長)に遠征隊を送って登頂に成功するとともに、低酸素環境下の医学研究を推進し、「ヒマラヤ学誌」を創設して四半世紀が経過した。その成果に対して秩父宮記念学術賞が授与された。ヒマラヤ学はさらに「フィールド医学」、「野生動物学」という、京都大学フィールド・サイエンスの新しい研究分野の創出につながっている。
直近の活動としては、ヒマラヤの小国ブータンを対象に、京大ブータン友好プログラムを2010年10月から始め、多数の部局の連携のもと、順調に成果を積み重ねてきた。派遣は15隊、のべ200余名の教職員学生がブータンに渡航した。また京大病院では総計78名の医師・看護師・職員をブータンに派遣している。「ブータンといえば京大、京大といえばブータン」という評価を確実なものとしている。2022年3月からは、JICA草の根事業「ブータン東部タシガン県における大学-社会連携による地域づくりに関する人材育成開発支援」(代表:坂本龍太)が始まっている。
一方、2022年4月に開始された人間文化研究機構の環インド洋地域研究プロジェクト京大拠点(代表:藤倉達郎)では、中印国境にまたがるネパールを中心とするヒマラヤ地域における「平和共生」をテーマに研究を推進している。本プロジェクトは、ネパールのカトマンズに本部を置く政府間組織(IGO)であり、環ヒマラヤ地域の環境・資源・社会変動についての総合的研究と情報発信をおこなっているInternational Centre for Integrated Mountain Development (ICIMOD)と連携している。
ヒマラヤ研究ユニットは「ヒマラヤ学誌」の刊行の継続にも努め、京都大学における文理融合的ヒマラヤ研究と国際交流・国際発信の促進の要の役割を果たしている。また、「ヒマラヤ地域の人類学」(学部)および「ヒマラヤ地域論」(大学院)を実施してきた。
ヒマラヤ研究ユニットでは、これらのプログラムを継続発展させ、京都大学の活動を恒常的に支援し、「第3の極地」を対象にした学際的かつ総合的なヒマラヤ学を世界に発信していきたい。
ヒマラヤ学誌
本ジャーナルについて
『ヒマラヤ学誌』は、ヒマラヤ地域を中心とした、学際的研究の成果および社会にとって有用と考えられる情報を幅広く掲載することを目指す、オンライン・ファーストの雑誌です。
早期公開論文
初期公開論文 最終公開版論文が発行・公開される前の論文をオンラインで提供しています。
ヒマラヤ学誌 投稿規定
ヒマラヤ学誌 執筆要領
編集委員
⽊下 こづえ(京都⼤学⼤学院アジア・アフリカ地域研究研究科)
熊⾕ 誠慈(京都⼤学⼈と社会の未来研究院)
坂本 ⿓太(京都⼤学東南アジア地域研究研究所)
⾼井 正成(京都⼤学総合博物館)
髙道 由⼦(京都先端科学⼤学バイオ環境学部)
⽵⽥ 晋也(京都⼤学⼤学院アジア・アフリカ地域研究研究科)
⽉原 敏博(福井⼤学学術研究院)
中村 友⾹(筑波⼤学⼈⽂社会系)
藤倉 達郎(京都⼤学⼤学院アジア・アフリカ地域研究研究科)